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ブレット・アンダーソン2年ぶりソロ・アルバムをリリース。インタビューも掲載!

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2009年に奇跡の復活を遂げ、サマーソニック2011にて悲願の来日を果たしたスウェード。圧巻のパフォーマンスを披露し、サマソニのベスト・アクトとの声も多数聞かれる。新曲制作についてのニュースが飛び交うなど、その動向に熱い視線が注がれる中、ブレット・アンダーソンの2年ぶりとなる新作ソロ・アルバムが登場!

今作はまさに“ロック・アルバム”。躍動感溢れるロック・サウンドが全編に亘って披露されている。ブライアン・イーノとの共同制作や、カール・バラーのプロデュースで知られるレオ・エイブラハムズをプロデューサーに迎え、レオとセブ・ロッチフォード(ポーラー・ベアー/ex.ベイビー・シャンブルス)とレオポルド・ロス(エラー)と共に2010年1月制作。

レオに「もっとロックしたギター・ベースのアルバムを作りたい」と話し、3日間かけてジャム・セッションが行われ、それをカット、エディットして、歌がつけられた。新しいチャレンジは、ブレットにより良い緊張感をもたらしており、この3日間のジャムをベースにしたことで、アルバムに統一したムードが生まれている。

 

 

ブレット・アンダーソン、インタビュー

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スウェード解散を経て2007年にソロ・デビューを果たして以来、ほぼ1年に1枚のハイペースでアルバムを発表し、しかも表現のスタイルを次々に変えて実験を重ねてきたブレット・アンダーソン。4枚目にあたる最新作も然りで、多数の管楽器を用いた、フォークとクラシックが交錯する前作『Slow Attack』から一転、メロディックなギター・ロックに回帰してこの『Black Rainbows』を完成。引き続きレオ・エイブラハムズをプロデューサーに迎え、仄かな翳り、ドラマ性、エッジーなギターワークといった、彼のルーツにあるUKポストパンクの匂いを満面に湛えた本作は、仕上がりからは知る由もないだろうが、インプロヴィゼーションのセッションを通じて形作っていったというアルバムだ。スウェードの作品からソロ作品を差別化するために、敢えてこれまで距離を置いてきたギター・ロックを、そのスウェードが再結成を遂げてツアーを大成功させている今、再び鳴らしているのはなぜなのか――。アルバム完成までに至る過程をブレットに振り返ってもらった。

――スウェードの再結成以来あなたは、バンドとソロを掛け持ちしてふたつの音楽的ペルソナをやりくりしていますが、両立は難しくないのでしょうか?

ブレット・アンダーソン(以下B): 難しくはないよ。衝突するとはあまり感じない。現時点でふたつは大きく違うものだからね。スウェードはツアーをしているだけで、過去の曲をプレイするのみ。今のところそれだけに留まっている。今後変わるかもしれないし、実際変わりつつあって、新しいアルバムを作る話をしているんだ。でも今のところは過去の曲をプレイするだけだけど、ソロは現在に根ざしている。新しい音楽を作っているから、僕にしてみればそこに衝突はないんだ。新しい音楽を作っていなかったら、スウェードでツアーすることに喜びは感じなかっただろうね。単に90年代に作った曲をプレイしているだけだったら、自尊心が損なわれていたと思う。2011年現在、新しい音楽を作っていない限り、アーティストとして存在意義を見いだせないんだ。僕にとってアーティストであることは、繰り返すのではなくクリエイトすること。大昔に何をしたかじゃなくて、今この瞬間に何をしているかが重要なんだよ。過去の功績の上に胡坐をかいていたいタイプじゃないからね。内容の濃いカタログや評価を確立していることは素晴らしいことだけど、僕が活動を続ける理由はそこにはない。モチベーションはほかにある。新しい音楽を作ること、エキサイティングな新しい音楽を作りたいという想いが、僕を駆り立てているんだ。それに『Black Rainbows』は興味深い作品なんだよ。なぜって、これはロック・アルバムだからね。これまでのソロ作品は全て意図的にロックから距離を置いていた。ロックというフォーマットを意図的に避けていたんだ。スウェードで5枚のロック・アルバムを作ったから、もう作りたいとは思わなかったし、ソロ・アーティストって往々にしてそういうものだよね。過去を否定するわけじゃないけど、過去を意識しておく必要がある。でも今回は……スウェードとして再びプレイするようになって、もう一度ロック・バンドの一員になってみて、またロックをやりたい気持ちになった。それでこのアルバムを作ったんだよ。

――ホラーズのライブがロック・アルバムを作るそもそものインスピレーション源だったと、資料には記載されていましたよね。それまでは考えがまとまっていなかったのですか?

B:そう、資料にある通りホラーズのライブに行ったんだけど、それはまあエピソードのひとつで、何もホラーズが僕に『Black Rainbows』を作らせたわけじゃないよ(笑)。そこに至るプロセスの一環だったというだけ。会場で、バンドが機材をセットアップするのを眺めていて、ロックバンドの一員であることがどんなにエキサイティングなものだったか思い出していたんだ。それが僕にインスピレーションをくれたわけだけど、実際ホラーズは大好きで、素晴らしいバンドだと思う。それはまた別の話なんだけどね。非常に興味深いバンドであり、現時点で若手ではお気に入りのバンドだよ。とにかく、そういうものが恋しくなるのさ。

スウェードが解散してからも別の形でライブはプレイしていたけど、大きく異なるものだったからね。ずっと静かで、オーケストラ的な音楽をしばらくプレイしていて、ロックバンドの攻撃的エネルギーが懐かしくなってきたんだよ。一度体験すると、大掛かりなライブで味わえる、押し寄せるようなパワーの高まりを一度体験してしまったら、それを手放すのは非常に難しい。かなり中毒性が高くて、ローリング・ストーンズのようなバンドがずっと活動を続ける理由も理解できる。手放すのは不可能なんだ。俳優にもミュージシャンにも当てはまるんだけど、「この業界から自主的に引退することはない。業界に引退させられる」というフレーズが、エンターテイメント業界でよく使われる。つまり、耳を傾けてくれる人がいる限り活動を続けるものなんだ(笑)。自分の音楽を聴きたいと人が思い続けてくれるように努力するのが、ミュージシャンの仕事なんだ。それが僕らの使命であり、やり遂げなければならない探求だね。自分自身が熱意を失わず、そしてほかの人たちにも興味を持ち続けてもらって、常に新しいことに挑戦して自分に刺激を与えなければならない。それゆえに僕は趣向が異なるソロ・アルバムを作ってきたんだよ。それが、当時僕が置かれていた状況下は、自然なプロセスであるように感じられた。そして自分が誇りに感じる作品を作ってきた。商業的に大きな成功を収めたわけじゃないが、それは重要なことじゃない。僕にとっての意味合いは、もう少しピュアなところにあったんだよ。

――本作に参加したミュージシャンたちは、プロデューサーのレオ・エイブラハムズが集めてきたのですか?

そうだね。実際のところ、このアルバムの誕生に関しては、レオの貢献に因るところが非常に大きい。彼に、こういうロック・アルバムを作りたい、非主流なロック・アルバムで、80年代のオルタナティブなサウンドが欲しいという話をしたんだ。僕らが参考にしたのは、PiLやスージー&ザ・バンシーズといったバンドで、最終的にはそこから自分たちのサウンドへと発展したわけだけど、音楽の歴史の中で特にあの時代を基点にしていた。それを踏まえてレオは、そういうサウンドを目指すのであればインプロ演奏のセッションを行なうのが最良のアプローチだと提案してくれたんだ。最初は「いったい何を言ってるんだい? クレイジーだよ!」というのが僕のリアクションだった。でも『Slow Attack』を一緒に作ったことで、レオを信頼するようになっていた。彼は非常に賢いミュージシャンで、正しい意見を言ってくれる。当初はすごく奇妙な提案だと思ったけど、少し時間が経つと納得できたよ。それにレオはインプロのセッションの経験が豊富だったからね。その手のセッションをブライアン・イーノとよくやっているんだ。彼はブライアンとコラボすることが多いし、ジャムだけ、インプロだけで構成された実験的ライブを頻繁に行なっている。僕にとってはあまりにも異質なコンセプトだったけど、慣れた環境から連れ出してくれたと思う。それはいいことだったんじゃないかな。時には自分に挑戦する必要があるからね。このアルバムではまさにそれを実践して、レオが過去にコラボしたことがあるミュージシャンたちを紹介してくれたんだよ。セブ・ロッチフォードも、レオポルド・ロスも然り。面白いことに、ギター/ベース/ドラムスの編成だと当然思うだろうけど、そうじゃないんだ。ドラムス/ギター/ギターで、ベーシストはいなかった。ベースが加わった瞬間、曲が固まってしまうような気がして、僕らは音楽をもっと自由なものにしたかった。ベースはオーバーダブで加えたんだ。だからジャムの時点では、ドラムがあって、2本のギターで音の壁を構築していて、編集作業の段階でベースを重ねた。変則的なんだよ。

――作詞のアプローチも毎回少しずつ変わっていますが、今回はどんな風に取り組んだんですか?

B: 歌詞については……前作は、非常にアブストラクトなスタイルで書きたいという考えに根ざしていた。『Slow Attack』は僕にとってすごくアブストラクトなアルバムなんだ。あのアルバムには具象的な要素は欲しくなかった。ある意味、印象主義的でさえある作品、詩的と言っていいくらいの作品にしたくて、奇妙な緊張感が、異教的とも表せる雰囲気があった。今回のアルバムは、それよりもずっとヒューマンな作品にしたかったんだ。そしてもう一度人間関係について書きたかった。でも、具象的かつ説明的なスタイルでは書きたくなかったんだ。そうではなくて、物事を暗示したかった。自分以外の人間と関わる上で生まれるテンションや限りない困難さを暗示したかったんだ。『Black Rainbows』はラブ・ソング集ではないけど、恋愛が引き起こす結果と向き合っていて、それが出発点なんだよ。

――ではタイトルに込めた意味は?

B:  “黒い虹”っていうのは、パラドックス(矛盾)だよね。まさにそのパラドックスが気に入っている。パラドックスを含んだタイトルが好きなんだ。『Slow Attack』もそうだったし、僕はその二元性に惹かれるんだよ。……でもどうだろう、あまり詳しく説明したくはない。僕にとってはパーソナルな側面があるけど、それを説明しようとするとマジックが失われてしまうことがあるからね。ただ、言葉であれこれ遊ぶのが好きなんだよ。

インタビュー構成・通訳: 新谷洋子

カテゴリ : 予約 | タグ : UK/US INDIE

掲載: 2011年09月28日 15:10