祝!映画『アーティスト』アカデミー賞5冠!【2012年はコレがくる!】白黒映画特集
第84回アカデミー賞で仏映画初の作品賞を受賞し、監督賞を含む5冠を達成した『アーティスト』はなんとサイレント&白黒映画!そこで、2012年は白黒映画が見直されると予想!白黒フィルムしかなかった時代のものから、あえて白黒フィルムを使った作品まで、白黒だからこそ生きる映画の名作集めました。
第84回アカデミー賞で仏映画初の作品賞を受賞し、作曲賞、監督賞を含む5冠を達成した『アーティスト』のサントラ!
洋画▼
動きと表情だけで製作から90年たった今の人々を爆笑させてしまうチャップリンのすごさ。
チャップリン作品で個人的に大好きなコメディ2作品。どちらもサイレントで、音と言えばたまに音楽が流れる程度。3Dやブルーレイなど昨今の映像に慣れている現在の人から見たら、初めは物足りないような気がするかもしれません。しかしその考えは始まって10分でガラガラと音をたててブチ壊れるでしょう。『街の灯』はチャップリン扮する浮浪者が盲目の女の子に恋をする話。主人公は2人ともかわいくて健気。気付いたら感情移入していて、ラストシーンでは嗚咽です。セリフの文字が画面に一言だけ表示されるのですが、その瞬間に涙がボロボロこぼれます。これを書いている今も涙が浮かんできます。この作品こそラブコメの基礎!『黄金狂時代』はチャップリンの喜劇王ぶりが存分に楽しめる作品。山小屋のシーンは爆笑です。靴を食べるシーンとロールパンをダンスさせるあの名シーン、笑いながらもものすごく切なくなる。一度見たら二度と忘れられません。彼を越える天才はもう現れないでしょうね。
屈強な男二人の女装姿に大爆笑!そのうえマリリンモンローのかわいさったら!
巨匠ビリー・ワイルダーの傑作コメディ。白黒だから見るに耐えれたであろう背も高くでがっしりした男2人(ジャック・レモンとトニー・カーティス)がマフィアから逃げるために足の毛を剃り、ドレスを着て、化粧も厚めに施し、女性になりすましして女性楽団に入団する!ブラのひもが切れただの、ヒールで歩けないよだの、女の子かわいいから手をだしたいだの、2人の会話が軽快でウィットに富んでてものすごく面白い!しかも2人が惚れてしまうマリリンのかわいさ、色っぽさは、やはり伝説になるだけのことはある!おとぼけも面白くて、本当は頭のいい女性なんだろうなと感じさせます。それに加え、マリリンが劇中で歌う歌の素晴らしさ。歌詞もかわいくて、マリリンのためにあるような歌なんです。とにかく最初から最後まで楽しくてしょうがない映画!それにしてもこの邦題をつけた人すごいなあ。
ジャック・レモン&シャーリー・マクレーンの演技がすごい!こんな一途な恋したい
こちらもビリー・ワイルダー監督作品。不倫や自殺未遂など悲しくなる出来事が起こるのになぜかとっても明るくて楽しい映画。主人公のバクスターは、上司の浮気のために自分のアパートを貸して、社内での評価を上げてもらっていた。そのバクスターはかわいくて、お茶目で、頭が良いエレベーターガール、フランが大好き。どうにかフランの気を引こうとアピールするが、彼女の恋人は自分の上司だった・・!フランはバクスターの部屋で自殺未遂を起こし、隣に住む医者に駆けつけてもらうが・・。その医者とバクスターとのやりとり、フランとバクスターが恋について語り合うシーン、パスタをテニスラケットで水切りするシーンは必見!バクスターがフランの幸せを願って自分を犠牲にする姿にホロリ。ずーっと心に残る映画です。
オードリー・ヘップバーンじゃないと成り立たない映画。この美しさは奇跡です。
この映画も名シーンの連続です。とにかくオードリーがローマの街を歩いているだけで、アイスクリームを食べているだけで、いや、ただ立っているだけで、シーンが目に焼きつくほどの存在感なんです。オードリー演じる王女、アンは忙しい毎日に嫌気がさし、こっそりとお城を抜け出して街へ繰り出し、なんとそのへんのベンチですやすや寝てしまった。その姿を目撃した新聞記者のジョーはアンが王女ということも知らずにややぶらっきぼうに介抱する。ジョーが帰ろうとすると心を許したアンはジョーにトコトコついていってしまい、身分に大きく格差のある2人の恋が始まるのです。ジョーが真実の口に手を入れて、手がちぎれたかのように振る舞い、アンをびっくりさせるシーン。あんなに見てる人までを幸せにするシーンは他にないはず。
24歳でこの映画を作ったオーソン・ウェルズの才能に、驚愕。
24歳といえばたいていの人はまだ新入社員としてやっと仕事を覚えたころ。しかしオーソンは24歳にしてこの映画で監督・脚本・主演・製作をこなすという、同じ人間とは思えないほどの溢れる才能とバイタリティを見せ付けてくれます。その映画の内容も、24歳の青年が作ったとは思えない重みと悲しみに満ちているもの。新聞王という地位を築き上げたケーンが「薔薇のつぼみ」という言葉を残して亡くなった。ケーンの生涯を映像化したい連中がケーンの生涯を追うと共に「薔薇のつぼみ」という言葉の謎に迫っていく。ケーンを演じたオーソンは、青年時代から亡くなるまでのケーンの風貌を見事に演じ分けていて、監督や脚本だけでなく俳優としてのものすごい才能を発揮しています。とにかく人生で1度は見ておきたい名作。
ジーン・セバーグの髪型がかわいすぎる。私は真似しました。
ヌーヴェルヴァーグを代表する作品として歴史に残っていますが、そこまで映画に詳しくない人にしてみたらヌーヴェ・・?という感じだと思います。私もです。そんなことをぬきにしても楽しめるのがこの映画。ジャン=ポール・ベルモンド演じるチンピラとジーン・セバーグ演じる新聞の売り子の危なっかしい恋。決して男前とは言えないのに、身のこなしや服装、しゃべり方が妙にかっこいいジャン=ポール。警官を射殺して逃走中というしょうもない男なのにちょっと憧れてしまいそうです。コケティッシュな魅力満開のジーンも、そんなチンピラを支えてあげるかわいい女性を演じています。ストーリーが面白いのはもちろん、何から何までお洒落でため息が出てしまいます。
人間の優しさも美しさも、そして残酷さも、ありとあらゆる感情が詰まっています。
鬼才デヴィッド・リンチ監督が19世紀のイギリスに実在したジョン・メリック、通称「エレファント・マン」の人生を描いた感動のヒューマン・ドラマ。当時の医学では解明出来ない謎の奇病により、生まれつきの奇形で生まれたジョン・メリック。その姿ゆえ人々から奇異な目で見られる彼の人生はアンソニー・ホプキンス演じる外科医トリーブスとの出会いにより一変する。新聞に取り上げられ、時の人となったメリックを待ち受ける運命とは…。この映画には人間の優しさも美しさも、そして残酷さも、ありとあらゆる感情が詰まっています。作品ごとに様々な謎を私たちに投げかけてくるデヴィッド・リンチ監督ですが、この作品では「幸せとは何か」という大きな謎を訴えている気がしてなりません。きっと人によって観終わったあとに湧き上がる感情は様々なはず。メリックの人生は果たして幸せだったのか?それとも悲劇の主人公なのか?是非その目で結末を確かめて欲しい映画史に残る傑作です!!
ニーノ・ロータの音楽とジュリエッタの声が印象深い、耳に残る名作。
フェリーニの代表作として名高いこの映画。主人公のジェルソミーナを演じるのはフェリーニの奥さん、ジュリエッタ・マシーナ。とにかくこの人の、知的障害のある女の子の演技が、鳥肌もの。素直で心が美しくて、ちょっとおとぼけなジェルソミーナはもう一人の主人公、アンソニー・クイン演じる荒くれ者、ザンパノと大道芸をするために旅に出るのだが、ザンパノに殴られようが暴言吐かれようが、悲しそうな顔はするものの平気っぽいところが良い。ザンパノ~!と呼ぶ声がめちゃかわいくて、抱きしめたくなるんです。ジェルソミーナがラッパで演奏するニーノ・ロータの音楽が、耳にこびりついてしばらく頭の中で鳴り続けます。
9歳なのにタバコを吸う、詐欺の才能のある生意気な女の子が憎たらしくも愛らしい
実の父子が演じたことでも話題になったこのお笑いロードムービー。詐欺をして暮らしているモーゼが、亡くなった恋人の娘アディと出会い、アディを預かってくれる親戚の家に送るまでの道中に、2人が本物の親子のように心をすこーしずつ通わせる親子映画の傑作。モーゼが呆然するほどに詐欺の才能を少しずつ開花させていくアディの、大人顔負けの口の利き方やベッドでタバコをくゆらせるシーンは笑わずにはいられません。モーゼが女の人を口説くとちょっとやきもちを焼くところがかわいい。史上最年少でアカデミー賞助演女優賞を獲得したのも納得のアディの演技に引き込まれてください。
大都会・ニューヨークが白黒だとこうも違って見える。
ウディ・アレンお得意のラブ・ストーリー。ウディ演じるアイザックは40代にも関わらず17歳の高校生トレイシーと付き合っている。この文だけ見ると、中年のおっさんが若い子に手を出してけしからん!となってしまいそうですが、この映画の中の2人は不思議と清潔感が漂っていて意外と清い交際をしているところが面白い。アイザックは40代にもなって駄々こねたりしちゃう困った親父なのに対してトレイシーがものすごく大人なところがいい。映画のラストシーンもトレイシーに優しく諭されて頷くアイザックの様子が、どっちが年上なのか分からなくなってきて、恋って年の差じゃないんだな・・結局ただの人間同士、合うか合わないかなのだな。と思わせてくれる映画。
トム・ウェイツが最高。酔っ払った演技させたら世界一では?
トムのかっこよすぎて鼻血ものの名曲「ジョッキー・フル・オブ・バーボン」と共に始まる、このえらいかっこいい映画、男子は必ず観るべき作品です。超かっこわるいのに憎めない大人の男の見本です。とにかくトムとサックス奏者のジョン・ルーリー、そしてイタリア人俳優のロベルト・ベニーニのちぐはぐで適当な会話が、アドリブなんじゃないかっていうくらいに日常っぽかったり、かと思えば練りに練られたやりとりのようだったりと、何度見ても全く飽きません。飲酒運転をするトム・ウェイツの演技は、本当に酔っ払ってるんではないかと疑ってしまうほど。ロベルトと、ニコレッタがダンスする音楽もめちゃいいです。音楽好きも必見の映画。
邦画▼
家族の話を撮らせたら小津安二郎の右に出る日本人監督は他にはいない!
『生れてはみたけれど』はサイレント映画。まずタイトルが良い。主人公の小学生の兄弟は、お父さんの仕事の都合で新しい土地に引っ越してきた。2人は会社で頑張って働く亭主関白のお父さんを尊敬している。怒ったら怖いけど、大きくなったらお父さんみたいになりたいな、と思う気持ちが伝わってきてほほえましい。しかしある日、お父さんが重役にペコペコして三枚目を演じている姿を目撃して・・・。ガキ大将にいじめられて学校をサボる姿もかわいらしい2人の兄弟が主人公だからこそ『生れてはみたけれど』が深い意味をもっている気がする。
嫁にいってしまう娘とその親の話を撮らせても小津さんの右に出るものはいない!
早くにお母さんを亡くし、戦後から笠智衆演じるお父さんと鎌倉で2人暮らしを続けてきた原節子演じる27歳の紀子。明るくてハキハキしていながらも控えめで上品な人柄に、観始めてすぐに好感を覚えます。“行き遅れ”と呼ばれながらもずっと2人で暮らしてきたお父さんの事が心配でなかなかお嫁にいく気になれない優しい娘。そこでお父さんが、娘に安心して嫁にいってもらうためにある作戦をたてて・・。お父さん役がハマりすぎてる笠智衆が、紀子の晴れ姿を見た時の顔は本当に泣けます。年頃の娘をもつお父さん、アラサー女子は絶対に観るべき。
どこにでもあるような物語。でもこんなに引き込まれて胸を打つのはなぜ・・?
こちらも巨匠、成瀬巳喜男による夫婦の映画。原作は林芙美子。大恋愛の末に結婚した原節子演じる三千代と上原謙演じる初之輔の夫婦は、倦怠期を迎えて家の中もどことなく暗く、2人とも面白くない表情をしている。小津さんの映画でお嬢さん役を演じた原節子の美しさに変わりはないが、美しさゆえに所帯じみてやつれている姿がなかなか衝撃的。そんな2人のもとに初之輔の姪が家出をして転がりこんできて家庭をかき乱し始めて・・。終始暗い画面と、これまた悲しそうな顔をしている猫が悲壮感を更にアップさせていて、夫婦ってこんなになっちゃうのかな・・と考えこんでしまう。観る人の心の中に入り込む映像は、さすが成瀬さんならでは。
いつの時代も子供は宝。そんな当たり前のことを思い出させてくれる映画。
2人兄弟の善太と三平は性格が正反対だけど仲良し。夏休みのある日、2人のお父さんが横領容疑で逮捕されて、三平はおじさんの家に預けられてしまう・・。この三平が家を出ていくところから涙腺はゆるみっぱなし。物語りも説明っぽくなく、わざとらしい演出も何もない素朴な映画なのに涙が後から後から流れる。そして善太が一人でかくれんぼをするシーンでは鼻水もドバドバ。三平がおじさんの家に着き、自分の家が見えるか木に登ってみるところで最高潮。子供の頃ってこんなこと考えてたっけ・・。こんな純粋な時代に戻りたいな、とセンチメンタルになってしまう傑作。
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掲載: 2012年02月03日 09:50