レインボー“三頭政治”時代のフル・ステージが作品化
ドイツのミュンヘン・オリンピアホールで1977年10月20日、行われたライヴを完全収録したこの映像作品は、まさに奇蹟の産物だ。1975年にディープ・パープルを脱退したリッチーが結成したレインボーの初期、中世ハード・ロック“三頭政治”時代のフル・ステージが、あますところなく収められている。
当時まだスタジオ・ヴァージョンが発表されていなかった「キル・ザキング」の殺気漂うライヴ・ヴァージョンからディープ・パープル時代の「ミストゥリーテッド」、ヤードバーズのカヴァーの域を超えてレインボー・クラシックスのひとつとなった「スティル・アイム・サッド」、アンコール「ドゥ・ユー・クローズ・ユア・アイズ」まで凄絶なステージが繰り広げられる。
当時32際のリッチーのギターは、35年の月日を超えて戦慄すらおぼえさせるものだ。ハードかつヘヴィに観客に襲いかかるリード・プレイ、クラシックやブルースからインスパイアされたソロの数々、アンコールのギター破壊まで、縦横無尽に弾きまくる演奏は、彼のロック・ギタリストとしての絶頂期を感じさせる。直前のウィーン公演後に暴行容疑で逮捕され、この日のライヴの直前に釈放されて会場入りしたこともあり、鬼気迫る一触即発のギターには、ファンならずとも震撼させられるだろう。
迫力のヴォーカル・パフォーマンスを披露するロニー・ジェイムズ・ディオ(当時35歳)、当時既に世界最高峰ドラマーの一人としての風格を漂わせるコージー・パウエル(当時29歳)という、今は亡きハード・ロックの伝説的ミュージシャンとリッチーが生み出す三位一体の錬金術は、もう二度と見ることの出来ない鮮烈なドキュメントだ。
ジミー・ベイン~マーク・クラークに続くベーシストとして迎えられたボブ・デイズリー(ベース/後にオジー・オズボーンやゲイリー・ムーアのバンドで活躍)、トニー・カレイの後任となったデイヴ・ストーン(キーボード)という実力派プレイヤー達もバンドを盛り上げており、コンピュータ制御の虹のステージ・セットもまた、このライヴを一大ヴィジュアル・スペクタクルへと昇華させている。
神々が集う虹の嶺(オリンポス)となったミュンヘンのステージ。我々はまばたきをすることすら許されない。
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タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2012年11月12日 12:30