2014年ベストの呼び声も高いアントールドの最狂テクノ・アルバム
ベース・ミュージックとテクノ、そしてロウ・ハウスとインダストリアル・リヴァイヴァル――アンダーグラウンドなエレクトロニック・ミュージック、そのカッティンジ・エッジな4トピックのクロスロードのまさにその中心を射抜いた作品としてすでに2014年ベストの呼び声も高い本作は、冷淡に四つを打つタムを覆う不気味なサイレン、ゆっくりと起動する歪な電子音「5 Wheels」(M-1)で幕を開けると、スパンキーで硬めなビートと呪術的な声ネタ、そして危険な電子音が跳ね回るところへあまりにも巨大で暴力的な音像がゆっくりと通過してあたりを荒野へと変貌させる「Dropit on the One」(M-2)、タイトルをダビーにリフレインさせたレゲエねたをブった切るように割って入る強烈に歪んだゴルいビートに震撼するキラー「Sing a Love Song」(M-3)、空間を歪ませながら殺意すら感じるインダストリアルなビートが乱打される「Strange Dreams」(M-6)と絶句するほど衝撃的なトラックの応酬に加え、本作をCD化するにあたってより完璧な鳴りを求めて本人自らアップデートを施した「Hobthrush(room mix)」(M-7)は圧巻の一言!アンダーグラウンドなエレクトロニック・ミュージック・シーンで蠢くトレンドに対してベース・ミュージックの側から猛攻をかけた本作は、2014年を振り返ったときに非の打ち所のない時代感覚を背負った金字塔として語られるであろう最狂のマスターピースである。
テクノとダブのもっともクレージーな結合が見られるこの『Black Light Spiral』は、間違いなく今年のベスト・アルバムのうちの1枚である。──野田努(ele-king)
【UNTOLD】
ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサー、アントールドことジャック・ダニング。2008年に<Hessle Audio>からシングル「kingdom」をリリースしデビューを果たすと、その後も<Hotflush>、<R&S>、<Soul Jazz>と名門レーベルからのリリース重ねながらポスト・ダブステップの隆盛と細分化においてテクノ~ハウス化の潮流を生むキー・パーソンとして常にその動向が世界から注目されている。また自身が主宰するレーベル<Hemlock>からは時代の寵児ジェームス・ブレイクが「Air & Lack Thereof」でデビューを飾ったのも有名で、他にもラマダンマン、ジョー、パンゲア、フォルティDL、コスミンTRGなど錚々たる面子が名を連ねている。そして2014年、長らく待たれたデビュー作『Black Light Spiral』を発表。ベース・ミュージックとテクノ、そしてロウ・ハウスとインダストリアル・リヴァイヴァル、現在地下シーンで蠢くキーワードの交差点として完成した唯一無二の振り切った音像はこれまでのディスコグラフィとはかけ離れた衝撃作として大きな話題となっている。
タグ : クラブ/テクノ
掲載: 2014年09月05日 19:23