ケニー・ホイーラーとジョン・テイラー、ふたりの音楽の美学を振り返る貴重な一作
1960~70年辺りより、美しくもプログレッシヴな演奏をクリエイトし続けた、ケニー・ホイーラーとジョン・テイラー、2人の偉大なるジャズ・プレイヤーを追悼するリリース。
2人は、最晩年、CAM JAZZ に良作を多く残し、本演奏は、2005年のもの。本来は、2014年84歳の生涯を閉じたホイーラーの追悼として企画された模様ですが、相方をつとめるジョン・テイラーは、この作品のためにライナー・ノーツの言葉まで書きながら、今年2015年に突然亡くなり、結果として、二人の功績をしのぶリリースとなりました。
録音からすでに10年。しかしもちろん、10年経って二人の音楽が色あせるわけは全くなく、作品冒頭を飾る音から世界観をたたえたものになっています。
元々、録音から即作品をリリースするわけではなく、企画をしっかり立ててリリースするのが、CAM JAZZ というレーベルの方針でもあり、本作は、発表される時を待っていたようにも見えます。
ある時は柔らかく、ある時は、刃のような鋭さをもつ、テイラーのピアノ。フリューゲル、トランペットを使い分け、詩的な演奏を見せるホイーラー。こうした、純粋な音楽の結晶は、おそらく、この先も色あせることなく響き続けることでしょう。
5曲がケニー・ホイーラーの楽曲、1曲がジョン・テイラーの楽曲、そして、3曲が2人の共作。そうした流れにあって、ラストにビリー・ストレイホーンの楽曲を配したのも粋な所。楽曲がもともと持っている端正な落ち着いた美しさを活かしながら、透明感を感じさせるクリスタルなピアノで色づけされた演奏は、この二人ならではと感じます。
2人は惜しくも亡くなりましたが、語り継がれ聴き継がれ、記憶に残って行くことでしょう。そんな2人の音楽の美学を振り返る貴重な一作です。
掲載: 2015年10月30日 20:04