イモータルのヴォーカリスト、アバスが新バンドを率いて日本初見参
1990年にノルウェーで結成したイモータルは、殺人と自殺、悪魔崇拝と教会放火に血塗られたブラック・メタル・シーンの生存者として崇拝されてきた。メイヘムやバーズム、エンペラーなど、同時期に活動していたバンドが次々とメンバーの死や逮捕などで斃れていく一方で、彼らはコンスタントに活動。ブラック・メタルのヴィジュアル・イメージであるコープスペイント(白塗り顔面ペイント)を受け継ぎ、8枚のアルバムによってエクストリーム・メタル界で常にリスペクトされてきた彼らだが、2015年8月にオリジナル・メンバーであるアバス・ドゥーム・オカルタ(ヴォーカル、ベース)とデモナズ・ドゥーム・オカルタ(ギター)が決別。世界に衝撃を呼んだ。
だが、アバスはまったく間を置くことなく、自らの名を冠した新バンド:アバスを始動。『ラウド・パーク15』で初来日ライヴを行い、鮮烈なインパクトを残した。そして、さらに畳みかけるがごとく、デビュー・アルバム『アバス』で還ってきたのだ。 新バンドのメンバーはアバスに加えて、かつてゴルゴロスのベーシストだったキング・オヴ・ヘル、そしてセパルトゥラからサバトン、ディキャピテイテッドまでのライヴでプレイした実績を持つ謎の覆面ドラマー、クリーチャーという布陣。実力派ミュージシャン達を得て、憤怒のエクストリーム・メタルが聴く者を蹂躙する。
ブラック・メタルのオリジネイターならではの暴虐エクストリーム・サウンドに加えて、メジャー感のある起伏に富んだ曲展開をフィーチュアした本作。タイトル通り、戦地に赴く緊迫感と殺傷衝動に満ちた「トゥ・ウォー」で始まり、破壊力と忘れがたいフックを兼ね備える「ウインター・ベイン」、ブラック・メタルの原始的衝動にシンフォニックな調べを取り入れた「アッシェズ・オブ・ザ・ダムド」、『ラウド・パーク』で披露されて大声援を浴びた「フェンリル・ハンツ」など、呵責なき轟音の塊が襲う。
イモータルの魂を継承しながら、さらなる地平線へと一歩踏み込んだ本作は、異形にして異端の音楽であるのと同時に、時代の混迷のサウンドトラックとしてのメタルの本道でもある。『アバス』は、2016年のメタル・ミュージックを占う重要作品でもあるのだ。
2016年初頭からヨーロッパ・ツアーを開始。ロンドン『フォーラム』やベルリン『アストラ』、パリ『バタクラン』を筆頭に、千人以上収容の会場でのライヴも多く予定されている。日本もまた、アバスに屠られる運命にある。そのレクイエム(葬送曲)が『アバス』だ。
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2015年12月07日 18:34