カタトニア、記念すべき10作目『ザ・フォール・オブ・ハーツ』完成
闇が帳を下ろすとき、ロックが新たな進化を迎える。記念すべき第10作目のアルバムで、カタトニアはスウェーデンの愁いをたたえたダーク・プログレッシヴ・ロック/メタルのさらなる深みへと歩を進めていく。
1991年にストックホルムで結成したカタトニアはデス/ドゥーム・メタル・バンドとしてデビューを果たしたが、徐々にデス・ヴォイスを排除。クリーンなヴォーカルをフィーチュアした耽美的かつプログレッシヴな方向へと向かっていった。そして『Dead End Kings』(2012)を発表後、彼らはさらに大胆な音楽の旅路へと赴く。ヘヴィネスとアンビエンスが理想的な融合を経たこの作品は世界的に高い評価を得たが、彼らは続いて同作を全曲アコースティック・アレンジした『Dethroned & Uncrowned』(2013)をリリース。さらに同作の世界観をさらに押し進めたアルバム/映像作品『サンクティテュード』(2015)ではロンドンの教会での、ロウソクの灯りに照らされた荘厳なライヴ・パフォーマンスを披露した。
そんな音楽の道程から帰港を果たした彼らが生み出す新作が『ザ・フォール・オブ・ハーツ』だ。彷徨の日々で培った空間の美学がメタリックなダイナミズムを取り戻し、攻撃性(アグレッション)と抒情性(リリシズム)そして先進性(プログレッション)が逆巻く怒濤となって聴く者へと押し寄せる。オープニングの劇的な「テイクオーヴァー」から6~7分台の楽曲が並ぶが、アルバム・トレーラー(予告編)で先行公開された「オールド・ハート・フォールズ」を筆頭に、コンポーザーとしての円熟と溢れかえる情感に満ちている。
アンダース・ニーストロム(ギター)とヨナス・レンクス(ヴォーカル)という結成以来の鉄壁のコンビに加えて、バンドの低音部を支えるニクラス・サンディン(ベース)、そして新加入のダニエル・モイラネン(ドラムス)という編成で作られた本作。さらにティアマットのロジャー・オージュレセン(ギター)が全面参加、ダークで荒涼としたカタトニアの世界観に得も言われぬ感情の昂ぶりをもたらしている。
アナセマやオーペスらと共に、プログレッシヴ・ロック/メタルの新しい潮流の担い手として注目されるカタトニアが翼を拡げ、飛び立つ刻(とき)が来た。
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2016年04月18日 11:45