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ジャー・ウォブル、“ユース”プロデュースによる新作

Jah Wobble

 

アフロ・ビート、ジャズ・ファンク、ダブ・フュージョンの世界へと勇敢に飛び込んでいる、驚くべきアルバム。ハイファイ録音のサウンドも最高で、これはジャー・ウォブル版マイルス・デイヴィスとも言うべき作品だ。-マーティン “ユース” グローヴァー

あの男が帰ってきた。

P.I.L.(パブリック・イメージ・リミテッド)でパンクとダブを濃密圧縮した衝撃ベース・プレイにより以後のポスト・パンク、オルタナティヴの流れに決定的な影響を与えたジャー・ウォブルが、母港とも言うべき自らのバンド、ジャー・ウォブルズ・インヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートと共に、最新作『Everything Is No Thing』を引っさげて久々の登場だ。

P.I.L.の『Public Image Limited』、『メタル・ボックス』とロック史に永遠に残る名作をジョン・ライドン等と共に作り上げ、ソロになると80年代にはU2のエッジやCANのホルガー・シューカイ等とコラボレイトしたり、90年代ではブライアン・イーノやビル・ラズウェルといった錚々たるミュージック・マイスターたちと意欲的な作品に取り組み、音楽ファンから絶対的なリスペクトを受け続けてきているジャー・ウォブル。

自らの原点としてレゲエ、ダブの存在が大きかったこともあり、積極的にカリブ、南米はもちろんのこと中東や東南アジアの音楽にも取り組み、さまざまな形で取り上げたりコラボレーションも行い、97年からは自身のインディペンデント・レーベル〈30 Hertz Records〉を立ち上げ、多彩な音楽をリリースするなど、そうした面でもイギリスでは高い信頼を得てきたアーティストだ。

そんなウォブルにとって原点とも言うべき自身のバンド、インヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートを再始動させ、作り上げたのが今回の傑作『Everything Is No Thing』だ。共同プロデューサーにキリング・ジョークのマーティン “ユース”グローヴァーを迎え、腕利きのブリティッシュ・ジャズ系のプレイヤーやホウクウィンドのニック・ターナーや、フェラ・クティのアフロ・サウンドをになったトニー・アレンなどをゲストに作り上げたのは、ジャズ、ファンク、アフロ、ワールド・ミュージックなどを自由にクロスオーバーさせたハイパー・ミクスチャー・アルバムであり、まさに彼にしか作り得ない世界。

サウンドそのものはとても親しみやすく、ジャズ、フュージョンとして楽しめたり踊れる一枚でもあるが、その根底に流れる膨大な音楽的な知識や体験が、他にはない圧倒的な世界観を作り上げている。

パンク以降の時代をもっとも誠実に音楽と共に歩んできた男の最新作は、完全に時代をとらえた一枚になっている。

 

掲載: 2016年06月16日 10:41