〈クンビア以上ハウス未満〉バリオ・リンド(Barrio Lindo)によるニュー・アルバム『Albura』
バリオ・リンドは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス出身で、現在はドイツのベルリンを拠点とする音楽プロデューサー、アグスティン・リバルドのソロ・プロジェクト。デジタル・クンビアの名門「ZZK」から(エル・ブホとの共作で)楽曲をリリースしたり、同レーベルの看板アーティストであるチャンチャ・ビア・シルクイートの作品に客演したりと、ブエノスアイレスのローカル・シーンではかねてからその将来が嘱望されていたニューカマーです。2014年にロボット・コッチやサブマースのリリースでおなじみのドイツの尖鋭ビート系レーベル「プロジェクト・ムーンサークル」からアルバム・デビュー。
本作『Albura』はそのセカンド・フル・アルバムで、「メキシコシティとブエノスアイレスのあいだのネットのどこか」で自身が立ち上げた新レーベル「シカ・シカ(Shika Shika)」からのリリース。
アルバム・タイトルの「Albura」とは、ギターのボディなどに使われる「辺材」と呼ばれる木の樹皮に近いフレッシュな部分のことを指すとか。アグスティンはリュート(アラブのウードや日本の琵琶とも近縁のヨーロッパ起源の弦楽器)奏者でもあります。本作では、リュートに加えて、ギター、チャランゴ、ケーナやマリンバなどの楽器も自ら演奏。
コロンビアのバイオリニスト、ジョン・モントーヤの哀愁あふれるバイオリンがさく裂したM①「Facon」、こぎみよいパーカッションと澄んだマリンバの響きがディープな密林ムードを掻き立てるM②「Huanaco」からルラクルーサの夢見ボーカルにフラリあの世へ誘われるM③「Otono Primavera」と、まずはオープニングからの掴みもバッチリ。
ヴードゥーホップやオプティモ、ディスコ・ハラルからのリリースで快進撃を続けるブラジルの新鋭キャロット・グリーンとコラボしたM④「Na Rua」も静かにヤヴァい。ラップをフィーチャーしたM⑥「Belleza en el Aires」やエラ・ミヌスが参加したM⑧「Tuneles」、アグスティン自らがマイクを握ったM⑨「Pura Danza」やM⑪「Saudade」(曲目どおりのサウダーヂなブラジリアン・チューン!キラーです!!)などなど、最後まで濃密な佳曲の連続で息つくヒマもなし。
クンビア、サンバ、カーニバルやフォルクローレなど、ラテン・アメリカの伝統要素とモダンなフロア向けのエレクトロニック音楽というふたつの異世界に血肉を通わせ未知のサウンドスケープを創出。
オーガニックでありながらもダンサブル、しかも抑制をきかせたセクシーなスロウ・グルーヴが主体で、ニコラ・クルースやヴードゥーホップあたりのムードがツボな方ならどハマリいただけること確実かと。クァンティックやニコ・デマス好きにも。
ボーナス・トラックとして「Otono Primavera」のGr◯un土リミックスを追加収録。
タグ : クラブ/テクノ
掲載: 2018年03月22日 13:44