8月1日公開:CLASSICバイヤーによるセレクト・アイテム〈CLASSICマスターズチョイス〉
2018年8月1日公開
高音質で堪能するクーベリックのベートーヴェン
オランダの高音質レーベル、PENTATONEは、クラシック・ファンには懐かしい老舗フィリップス・レーベルのスタッフたちが2001年に設立、元フィリップスのエンジニア陣が参画し、SACDハイブリッド盤を軸に、一貫して高音質にこだわってきたレーベルとして知られています。新たな優秀録音盤を送り出す一方で見逃せないのが、かつてのフィリップスやドイツ・グラモフォンの1970年代名盤の数々を高音質化するという、まさに彼らのDNAを証するというべきラインナップ、RQRシリーズ、REMASTERD CLASSICSシリーズです。アナログ・ステレオ録音のDSDマスタリングによる高品位デジタル化はSACDの特性を最大限に活かすもので、その驚くべき成果はタワーレコード・オリジナル企画盤での諸シリーズでも堪能することができます。
今店頭では、DSDマスタリング復刻によって新たな、いえ本当の価値を顕したとも言える、そういったPENTATONEのSACDハイブリッド盤を精選し、セールを開催しています。今回特にお薦めしたいのは、ラファエル・クーベリックがドイツ・グラモフォンで9つのオーケストラを指揮し完成させたベートーヴェン:交響曲全集のSACD化シリーズです。
現在、あと第3番『英雄』を残すのみとなっており、すでに第1番(ロンドン響)&第4番(イスラエル・フィル)、第2番(ロイヤル・コンセルトヘボウ管)&第5番『運命』(ボストン響)、第6番『田園』(パリ管)・第7番(ウィーン・フィル)&第8番(クリーヴランド管)、そして手兵バイエルン放送響との第9番『合唱』、計4枚がリリース済みです(第4~6番はかつて本家からもSACDハイブリッド盤が出ていましたがもはや入手困難)。
このシリーズは、当時ドイツ・グラモフォンが1977年のベートーヴェン没後150年に向けて企画した非常に意欲的なプロジェクトでした。1971年ベルリン・フィルとの第3番『英雄』を皮切りに、最後は1975年に第9番『合唱』、第8番、第4番を、オケを変えながら次々と録音し完成させました。なお、2011年にはタワーレコードが別録音の第7番(1970年バイエルン放送響)をさらに加えCD6枚組全集として復刻し大好評を頂きました。
クーベリックの指揮は各オケの特性を硬軟に渡って申し分なく活かしており、単独で捉えても実に格調高い秀演揃い。例えば、第6番『田園』でパリ管から引き出す幸福感に満ちた響き、たっぷりとした音楽の運びは大変印象深いものですし、第9番『合唱』での満を持した、集大成を期すかのような緊密で凝集度の高い演奏はまさしく充実の聴きものです。高音質化により、さらに明瞭となった細部のニュアンス、音楽の奥行き、そして最大化したみずみずしいソノリティをぜひご堪能ください。
交響曲第1番&第4番
曲目
(1)ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調Op.21
(2)ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調Op.60
演奏
(1)ロンドン交響楽団
(2)イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
録音
(1)1974年ステレオ
(2)1975年ステレオ
交響曲第2番&第5番『運命』
曲目
(1)ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調Op.36
(2)ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調Op.67『運命』
演奏
(1)ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(2)ボストン交響楽団
録音
(1)1974年ステレオ
(2)1973年ステレオ
交響曲第6番『田園』,第7番,第8番
曲目
(1)ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調Op.68『田園』
(2)ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.92
(3)ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調Op.93
演奏
(1)パリ管弦楽団
(2)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(3)クリーヴランド管弦楽団
録音
(1)1973年ステレオ
(2)1974年ステレオ
(3)1975年ステレオ
交響曲第9番『合唱』
曲目
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱』
演奏
バイエルン放送交響楽団
録音
1975年ステレオ
ハイティンクとシノーポリ、ドレスデンとの重厚ライヴ
今店頭では、巨匠たちのライヴ録音を数多くCD化してきた独Profilレーベルのアイテムを厳選し、輸入盤レーベル・セールを開催中です。その中からお薦めのアイテムを2つ…。
当代を代表する名指揮者、ベルナルト・ハイティンク(1929.3.4-)も今年で89歳を迎えました。彼は2002年~2004年にシュターツカペレ・ドレスデン(SKD)の首席指揮者を務めており、当盤は2009年9月29日ドレスデン文化宮殿で開かれた首席指揮者就任記念演奏会ライヴ(拍手あり)。ハイティンクのブラ1はこれが4種目のディスクとなります。その後SKDとは後任人事を巡って齟齬があり幸福な去就とはなりませんでしたが、ここで聴かせる円熟の境地は、SKD独特の底光りするような音響美と相俟ったまさに名演というべきもの。ゆるりと力みが抜けた風格あふれる音楽の構え、弦や金管のビリ付くような響きの質感がたまらない魅力を放っています。名手フランク・ペーター・ツィンマーマンを独奏に迎えたベートーヴェンの協奏曲もさすがの出来映えで、ライヴならではの感興が横溢した秀演です。
『アイーダ』上演中に急逝してしまったジュゼッペ・シノーポリ(1946.11.2-2001.4.20)は強烈な個性で鳴らした忘れがたいマエストロでした。1992年からシュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者を務めていましたから、在任中に逝去したことになります。当盤は、スケールの大きい、ライヴ特有の熱気をはらんだ音源の数々から精選した2枚組。特にSKD450周年ライヴのワーグナー:『リエンツィ』序曲は堂々たる名演。冒頭、荘重に奏でられるリエンツィの「全能の父よ」の旋律から急速に発熱していく劇的な筆致は実にシノーポリらしいものです。SKDの音色美を存分に堪能させるリヒャルト・シュトラウス:『英雄の生涯』や、反復なし、間を詰め気味に畳みかけながら要所で抉りを効かせるシューマン:交響曲第4番と、大作も収録。作曲家だった彼の作品3編も自演を交えて収めており、シノーポリのレガシーを感じさせてくれる印象深い一組です。
ハイティンク、シュターツカペレ・ドレスデン・ライヴ2002
曲目
Disc 1
ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
Disc 2
ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op.68
演奏
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
ベルナルト・ハイティンク(指揮)シュターツカペレ・ドレスデン
録音
2002年9月29日/ドレスデン文化宮殿(ライヴ)
ジュゼッペ・シノーポリ~エディション・シュターツカペレ・ドレスデンVol.35
曲目
Disc 1
(1)ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
(2)リヒャルト・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」Op.40
(3)ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
Disc 2
(1)リスト:交響詩「オルフェウス」
(2)シノーポリ:コスタンツォ・ポルタ讃歌
(3)同:愛の墓III~チェロと管弦楽のための
(4)同:交響的断章「ルー・ザロメ」
(5)シューマン:交響曲第4番ニ短調Op.120
演奏
Disc 1
ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)シュターツカペレ・ドレスデン
Disc 2
ジュゼッペ・シノーポリ
(1)(2)(5)、シルヴァン・カンブルラン(3)、ペーター・ルジツカ(4)(指揮)シュターツカペレ・ドレスデン、
ペーター・ブルーンス(チェロ)(3)
録音
1998年10月27日(1)、1994年12月20日(2)、2004年3月5-6日(3)、2001年10月6日(4)、1993年8月30日(5)
ドレスデン、ゼンパーオーパー(ライヴ)
新宿店:森山 慶方
- 店舗名
- 新宿店
- 店長名
- 森山 慶方
- 趣味
- 音源チェック 書店巡り ラグビー観戦(JRFUメンバーズクラブ会員) 声楽と指揮を楽しみレベルでまた再開したいなと夢想…
- 好きなジャンル
- オケもの、オペラ・声楽曲、古楽
- 愛聴盤
-
- フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル『シューマン:交響曲第4番』
- ベルティーニ指揮ケルン放送響『マーラー:交響曲第3番』
- クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭管『ワーグナー:舞台神聖祭典劇『パルジファル』』
協奏曲やソナタ、小品を幅広く収録!MEMBRAN『ヨゼフ・シゲティ名演集』(10枚組)
ヨゼフ・シゲティ(1892~1973)はハンガリー出身の20世紀を代表する大ヴァイオリニストの1人。このメンブランのBOXは、彼のモノラル時代の商業録音や放送録音でパブリック・ドメインとなったものを集めた1枚あたり数百円の超廉価BOXです。録音状態に凹凸はありますが、演奏・録音とも良いものは素晴らしい感動を約束してくれます。古典派作品の名演では、まずタルティーニのヴァイオリン協奏曲【CD8】(CDと別の機会の演奏ですが、ほぼ同時期のYouTube動画を付けました)。端然とした造形の中、ヴァイオリンの哀切な音色が、高みを目指すかのようなフレージングとともに聴き手の胸に迫ります。同じ【CD8】に入ったバッハのヴァイオリン協奏曲も、有名な第2楽章アリオーソが実に味わい深い演奏となっています。ロマン派ではカザルス、ヘスと組んだブラームスのピアノ三重奏曲第2番【CD2】。カザルスのチェロは地の底から湧き上がるような音で、彼の唸り声とともに旋律を熱く歌い上げ、シゲティのヴァイオリンが白熱した表情で力強くチェロに応じ、ヘスのピアノが両者を大きく包み込む、という気宇壮大な演奏が成し遂げられています。20世紀音楽では【CD8】の最後に入っているラヴェルのヴァイオリン・ソナタが、枯れた筆致で作品に内在する退廃的な気分と表現主義的な熱を見事に表現した名演です。
ヨゼフ・シゲティ『ヨーゼフ・シゲティ名演奏集』
演奏
ヨゼフ・シゲティ(ヴァイオリン)パブロ・カザルス(チェロ)マイラ・ヘス、ミエチスラフ・ホルショフスキ(ピアノ)
トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィル、ジョージ・セル指揮コロンビア交響楽団、他
録音
1908~1953年(モノラル)
INA提供・完全初出音源!BPO、VPOを率いた『カラヤン・イン・パリ 1960&1962』(分売)
カラヤンが1960年と1962年に、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルをそれぞれ率いてパリで演奏したライヴ録音が、フランス国立視聴覚研究所(INA)提供の正規音源から完全初出CDとしてリリースされます。前者はベートーヴェン・ツィクルスの最終日、交響曲第8番と第9番を収録したもの、後者はシューベルトの“未完成”とR.シュトラウスの"ツァラトゥストラ”を中心に、カラヤンのディスコグラフィに無かったロカテッリの合奏協奏曲変ホ長調が入る、という注目のプログラムです。
発売前から大きな話題を呼んでいましたが、発売された盤を聴いて想像以上の凄絶な名演・名録音に驚かされました。前者はモノラル、後者はステレオですが、音質はともに鮮烈そのもの。同時代の放送録音の水準を大きく上回る音質だと思います。またブックレットやトレイ下にはINAが保管していた録音テープの缶やテープの写真が印刷されているのもマニア心をくすぐります。
そして何より、両方とも気合が入った演奏で、音楽がたった今生まれたように生々しく語りかけてきます。1960年のベルリン・フィルはフルトヴェングラー時代の重厚にして真摯な響きを留め、共演のエリザベート・ブラッスール合唱団の尋常でない絶唱も素晴らしく、第九終楽章の二重フーガの高揚は筆舌に尽くしがたいものがあります。コーダでの打楽器群の最強打も凄まじく、パリの聴衆から熱狂的な歓呼が湧き上がっています。
1962年のウィーン・フィルの響きやフレージングも魅力にあふれ、名演の誉れ高いカラヤン&ウィーン・フィルのブカレスト・ライヴ(曲目は異なりますが)と同じような感動を味わうことができます。しかも録音は、ブカレスト・ライヴがモノラルであったのに対し、今回のパリ・ライヴは圧倒的に鮮明なステレオです!
ベートーヴェン: 交響曲第8&9番<完全限定盤>
演奏
ヘルベルト・フォン・カラヤン 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 、 エリザベート・ブラッスール合唱団 、 ヴィルマ・リップ
録音
1960年4月26日/シャンゼリゼ劇場(モノラル)
シューベルト: 交響曲第7番「未完成」、他<完全限定盤>
演奏
ヘルベルト・フォン・カラヤン 、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音
1962年4月9日/シャンゼリゼ劇場(ステレオ)
商品本部 洋楽部:板倉重雄
- 所属
- 商品本部 洋楽部
- 名前
- 板倉重雄
- 趣味
- レコード蒐集(SP~CD)、音楽書・美術書蒐集、野球観戦
- 愛聴盤
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- ヨゼフ・シゲティ、ミエチスラフ・ホルショフスキ『『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1&3番』』
- イェルク・デムス、バリリ四重奏団『『シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲』』
- ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団『『シューベルト:弦楽四重奏曲第15番』』
タグ : マスターズチョイス
掲載: 2018年08月01日 12:00