11月9日公開:CLASSICバイヤーによるセレクト・アイテム〈CLASSICマスターズチョイス〉
2018年11月9日公開
緊密・凝集の極みに達した音響が炸裂!クルレンツィスのマーラー『悲劇的』
むしろロシア辺境の地から、自ら組織したオーケストラ、ムジカエテルナを率い、疾風怒濤のごとく強烈極まる音楽を発信し続け、もはや彼の存在する場所こそがメインストリームであることを実証しているのが指揮者テオドール・クルレンツィス。待望の新作、初のマーラー録音となった交響曲第6番『悲劇的』はまさに期待を上回る一撃でした。前作チャイコフスキー『悲愴』でも強力なインパクトを与えた緊密かつ凝集の極限に挑むかのようなムジカエテルナの合奏力は、まさしくマーラーに打ってつけ。冒頭から炸裂する激越な第1主題でのマッシヴな圧力、細部に渡る強弱・緩急の詳細なコントロール、響きの統一感の見事な仕上がりはテオの手腕の真骨頂というべきものですが、さらに圧倒的なのは唯美的とも思わせる音楽的美の追求が底流に息づいていること。急迫楽章の連続の後に来るアンダンテ・モデラートでの陶酔的な彫琢とのコントラストには目まいすら覚えるほど。終楽章でのハンマーは2回。狂熱的でうねるような緊密表現の果てに打ちのめされる音楽体験をぜひ味わって下さい!
マーラー: 交響曲第6番イ短調「悲劇的」
曲目
マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」
演奏
テオドール・クルレンツィス指揮
ムジカエテルナ
録音
2016年7月3日~9日、モスクワ Dom vukozapisi(house of recordings)
新宿店でご試聴いただけます
故郷で歌い綴る魂からの歌。フォン・オッターの『シンプル・ソング』
冒頭、個人的には作曲家バーンスタインが書いた最高の旋律といいたい『シンプル・ソング』の何と美しく、気高く、自由なこと!バーンスタイン生誕100年の今年、ひときわ光が当てられた大作『ミサ曲』の重要曲、何度もリピートして聴き惚れました。メゾ・ソプラノの第一人者、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター。彼女が歌手として第一歩を踏み出したのが故郷ストックホルムの聖ヤコブ教会。ここで歌い編まれたこの精華集は、まさしく彼女の魂からの歌が聴ける逸品といってよく、マーラーの『原光』やR.シュトラウスの『明日の朝』、リストが書いたアヴェ・マリアなど、美しさに惹き込まれる珠玉作ばかりを収録。彼女のリサイタルでピアノを弾いてきた長年の盟友、ベンクト・フォシュベリは、もとはオルガンを学んだ人。彼の奏でる時に優しく特に雄弁なオルガンに支えられ、フォン・オッターが円熟の歌い口で綴る本当に素敵な一枚。歌そのものがお好きなかたにぜひおすすめしたいです!
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター/ベングト・フォシュベリ
曲目
(1)レナード・バーンスタイン(1918-1990):シンプル・ソング(スティーヴン・シュウォーツ、レナード・バーンスタインの詩)(《ミサ(Mass)》(1971)から)
(2)アーロン・コープランド(1900-1990):オルガンが話すのを時々聞いた(エミリ・ディキンソンの詩)
(3)チャールズ・アイヴズ(1874-1954):静穏(ジョン・グリーンリーフ・ホイッティアーの詩)
グスタフ・マーラー(1860-1911):
(4)三人の天使がやさしい歌を歌い(『子供の不思議な角笛』の詩)
(5)原光(『子供の不思議な角笛』の詩)
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949):
(6)たそがれの夢(オット・ユリウス・ビーアバウムの詩)
(7)あした!(ジョン・ヘンリー・マッケイの詩)
(8)アルヴォ・ペルト(1935-):わが心はハイランドにあり(2000)(ロバート・バーンズの詩)
(9)モーリス・デュリュフレ(1902-1986):ピエ・イエズ(《レクイエム》から)
オリヴィエ・メシアン(1908-1992):
(10)-(12)3つの歌(1930)
【i.なぜ?(オリヴィエ・メシアンの詩)/ii.ほほえみ(セシル・ソヴァージュの詩)/iii.行方不明の婚約者(オリヴィエ・メシアンの詩)】
(13)フランシス・プーランク(1899-1963):平和への祈り(シャルル・ドルレアンの詩)
(14)フランク・マルタン(1890-1974):アニュス・デイ(《レクイエム》から)
(15)アルヴォ・ペルト(1935-):何年もの昔、歌っているのを聞いた(1985)(クレメンス・ブレンターノの詩)
(16)フランツ・リスト(1811-1886):アヴェ・マリア S.60
(17)リチャード・ロジャーズ(1902-1979):すべての山に登れ(オスカー・ハマースタイン二世(作詞))(《サウンド・オブ・ミュージック》から)
演奏
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)、
(1)-(14)(16)(17)ベンクト・フォシュベリ(オルガン;マルキュッセン・オルガン)
(1)ファビアン・フレードリクソン(エレクトリックギター)、
(1)シャロン・べザリー(フルート)、
(1)(7)マルガレータ・ニルソン(ハープ)、
(7)(15)ニルス=エーリク・スパルフ(ヴァイオリン)、
(9)マリー・マクラウド(チェロ)、
(15)エレン・ニスベト(ヴィオラ)
録音
2016年12月/聖ヤコブ教会(ストックホルム、スウェーデン)
新宿店:森山 慶方
- 所属
- 新宿店
- 名前
- 森山 慶方
- 趣味
- 音源チェック
書店巡り
ラグビー観戦(JRFUメンバーズクラブ会員)
声楽と指揮を楽しみレベルでまた再開したいなと夢想… - 好きなジャンル
- オケもの、オペラ・声楽曲、古楽
- 愛聴盤
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- フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル『シューマン:交響曲第4番』
- ベルティーニ指揮ケルン放送響『マーラー:交響曲第3番』
- クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭管 ワーグナー:舞台神聖祭典劇『パルジファル』
庄司紗矢香と巨匠テミルカーノフの大名演登場! 両曲とも数多いCD中でトップ・クラスの秀演です!
【参考動画】ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
庄司紗矢香(Vn)トマス・グラウ指揮 カメラ・ムジカエ響
Orquestra Simfònica Camera Musicae公式YouTubeページより
両曲とも過去の名盤群に一歩も引けをとらない大名演の登場。ベートーヴェンはオケの前奏から落ち着いた音色とテンポ、リズム、ピラミッド状の音響が最高。庄司のヴァイオリンも木目調の音色と落ち着いた佇まいがあり、名人の運筆のようなフレージングとヴィブラートの使い分けが作品の情景を絶妙に描き出してゆきます。彼女自身によるカデンツァも重音で2つのメロディを組み合わせたり(第1楽章)、ロンド主題を重音、フラジョレット、左手ピッツィカートで変奏したり(終楽章)と内容豊か。第2楽章もオケの優しい、温かみのある合奏に包まれて、ヴァイオリンが輝きのある音色で、断片をつなぎ合わせたような旋律を艶やかに歌っています。シベリウスでは一転して極北の空気感と緊張感の中で、ヴァイオリンが冷たいほど冴えわたった音で、情熱あふれる妙技を披露。G線の朗々とした唸らせ方も凄まじく、聴き応え満点の演奏を展開しています。参考動画はこのCDとは違う機会のベートーヴェンですが、やはり冒頭から最高の美音による凝った節回しを聴かせていて秀逸です。
ベートーヴェン&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
曲目
ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 [カデンツァ:庄司紗矢香]
シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
演奏
庄司紗矢香(ヴァイオリン)
ユーリ・テミルカーノフ指揮
サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
録音
2017年10月 サンクトペテルブルク〈ライヴ録音(シベリウス)〉
グノー生誕200年記念。16歳のビゼーが交響曲を作曲する契機となった師グノーの魅惑的な交響曲第1番を含む決定盤。初出時以来の復活!
筆者が2018年のグノー生誕200年に際し、様々なディスクに接しているうちに出会った名盤です。長く廃盤でしたが2018年12月5日発売のタワーレコード企画盤として復活いたします!グノーはイタリア留学中にファニー・メンデルスゾーン(大作曲家の姉)に出会い、ドイツの音楽や文学の感化を受け、ドイツ語をマスターするほど入れ込みます。バッハ/グノーのアヴェ・マリアや、歌劇《ファウスト》はその成果です。この交響曲2曲もモーツァルトやメンデルスゾーンの影響下にある古典的な形式と美しいメロディ、明るい色彩にあふれた魅力作です。グノーの弟子、ビゼーは16歳の時に師の交響曲第1番に接し、交響曲の作曲に取り掛かりますが、それが今日知られる交響曲ハ長調です。しかし、グノーの第1番を聴くと、ビゼーがいかに師の作品を真似て作曲したかが理解できます。モーツァルト、メンデルスゾーン、ビゼーの交響曲に名盤を残したマリナーは、グノー作品の最適任者で、事実同曲CD中最高の演奏を成し遂げています。ぜひこの機会にご予約いただければ幸いです。
グノー: 交響曲第1番&第2番、《ファウスト》からバレエ音楽<タワーレコード限定>
曲目
シャルル・グノー:
1. 交響曲 第1番 ニ長調
2. 交響曲 2番 変ホ長調
3. 交響曲歌劇《ファウスト》からバレエ音楽
演奏
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
サー・ネヴィル・マリナー(指揮)
録音
1997年3月 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
商品本部 洋楽部:板倉重雄
- 所属
- 商品本部 洋楽部
- 名前
- 板倉重雄
- 趣味
- レコード蒐集(SP~CD)、音楽書・美術書蒐集、野球観戦
- 愛聴盤
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- ヨゼフ・シゲティ、ミエチスラフ・ホルショフスキ『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1&3番』
- イェルク・デムス、バリリ四重奏団『シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲』
- ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団『シューベルト:弦楽四重奏曲第15番』
タグ : マスターズチョイス
掲載: 2018年11月09日 19:00