WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.19
スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト『ゲッツ/ジルベルト』(1964)
スタン・ゲッツ(ts)
ジョアン・ジルベルト(g,vo)
アストラッド・ジルベルト(vo)
アントニオ・カルロス・ジョビン(p)
トミー・ウィリアムス(b)※実際はセバスティアン・ネト
ミルトン・バナナ(ds)
1963年3月18 & 19日、ニューヨークにて録音
曲目:
1.イパネマの娘
2.ドラリセ
3.プラ・マシュカー・メウ・コラソン
4.デサフィナード
5.コルコヴァード
6.ソ・ダンソ・サンバ
7.オ・グランジ・アモール
8.ヴィヴォ・ソニャンド
【アルバム紹介】
1.60年代、ボサノヴァ大ブームを起こした傑作アルバム
2.“イパネマの娘” はジョアン・ジルベルトの妻アストラッドが英語で歌って大ヒット
3.クール・テナーのスタン・ゲッツの魅力
アルト・サックスのアート・ペッパー(前々回)、バリトン・サックスのジェリー・マリガン(前回)と、ソフトなトーンが特徴ともいえるサックス奏者の名盤をご紹介してきました。今回は“クール・テナー”と呼ばれるテナー・サックスの名手スタン・ゲッツの傑作『』ゲッツ/ジルベルト』を取り上げます。
本作は60年代に一大ボサノヴァ・ブームを巻き起こした大名盤であり、ブラジルからボサノヴァ・シンガーの第一人者ジョアン・ジルベルト、そして巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンらが参加し、楽曲もジョビンの名曲を満載した不滅のロングセラー盤です。1965年のグラミー賞で、最優秀アルバム賞、最優秀エンジニア賞、最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞、最優秀レコード賞を受賞、まさに当時は旋風のごとき勢いの一作だったのです。
中でもジョビンの代表曲である“イパネマの娘”は、最初はジョアン・ジルベルトのポルトガル語による歌唱ですが、続いて、当時のジョアンの妻のアストラッドが英語詞で歌い、そしてゲッツのテナーがソロをとるという華やかな構成は数々存在する同曲の最高のヴァージョンとも言えます。この時、アストラッドはシンガーとして初録音の1曲であり、その醸し出すノスタルジックな歌声は非常に魅力的だったため、本作のプロデューサーのクリード・テイラーはジョアンの歌唱部分をカットし、アストラッドの歌唱を残してシングル・カット、結果世界的な大ヒットとなりました。
このアルバムはジョビンの名旋律による名曲のオン・パレードといってもいい内容ゆえ、捨て曲が1曲もありません。また、そこでソロをとるスタン・ゲッツのクールなテナーがどれも絶品で、ライトなギター、ピアノをフィーチャーしたボッサのリズムの上を行く歌うようなフレージングは体感温度を2~3度下げてくれる効果を担っているように聴こえます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
アルバムは1曲選ぶのが難しいほどの完成度。でもやっぱり“イパネマの娘”。
ジョアンのつぶやくような歌声で始まるこの曲はジョビンの音楽を語る上では欠かせない名曲です。それゆえ、いろいろなエピソードがこのレコーディングにはあります。
ジョアンは英語の歌唱を嫌い、レコーディングについてきていたアストラッドが英語詞の歌唱でちょっと歌ってみたところ、それが非常にいい感じで、しかもその後、アストラッドの歌唱部分のみのシングル・ヴァージョンが大ヒットしてしまい、それがジョアンとアストラッドが離婚する原因だったとか、このアストラッドのヴォーカルが本当は左チャンネルから聴こえるのがオリジナルなのですが、現在一般的に流通しているでディスクは右チャンネルから聴こえるマスターを使用している(但し、2014年の50周年記念デラックス・エディション、2018年のタワー企画のSACDハイブリッド盤はオリジナル通りで収録)など、超有名曲ならではのストーリーがあります。
なおこの『ゲッツ/ジルベルト』には『ゲッツ/ジルベルト#2』という続編があり、それはジョアン、アストラッド参加の1964年のカーネギー・ホールでのコンサートの模様を収録したライヴ盤、それ以降も、1976年にリリースされた『ゲッツ/ジルベルト』のレコーディングから12年後のジョアンとゲッツの再共演盤『ゲッツ・ジルベルト・アゲイン』(原題『The Best Of Two Worlds』)、そして2016年にアメリカ西海岸のレーベル、レゾナンスからの発掘音源である、1976年のキーストン・コーナーでのジョアンとゲッツのパフォーマンスを収録したライヴ盤『ゲッツ/ジルベルト'76』が出ています。
SHM-CD国内盤(一般普及盤)
UHQCD国内盤
UHQCD x MQA-CD国内盤
SA-CD HYBRID国内盤(2018年タワーレコード企画盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2019年03月22日 10:00