渋谷店AON - Adult Oriented NewWave -:RETRO MODERN
AON(Adult Oriented NewWave)~大人のための80’sミュージック~という新たな切り口のもとに、ニューウェイヴ世代の音楽を聴き直してみましょう。
Mari Wilson『プラチナム・コレクション Mari Wilson<タワーレコード限定>』
トット・テイラー主宰のコンパクト・オーガニゼイションを代表する歌姫。本作はコンピレーションではあるけれど、名匠トニー・マンスフィールドがプロデュースした傑作デビュー作『Show People』の楽曲が全て収録されているのが嬉しいポイント。60sポップス、とりわけモータウンを意識したレトロ・テイストを、80sのモダンなプロダクションで洒脱に仕立てた楽曲が素晴らしく、彼女の名を一躍広めたヒット曲①をはじめ、⑦⑧⑪などまさに80sエレ・モータウン。特にファストな⑯はフロア映えする最強のダンス・チューン。また、バカラック・カヴァー⑬やジャジーな⑳などの甘いウェット感も良い。
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Fairground Attraction『ファースト・キッス』
エレクトロニックなダンス・サウンドが隆盛を極めていた80年代後期のイギリスに、まるで爽やかな涼風が吹くように登場したグループの名盤。オールドタイミーなジャズのスタイルにフォークやカントリー、ロカビリーなどの要素も交えたアコースティック・サウンドは、エリオット・アーウィットのジャケット写真そのままに柔らかなモノクロームの色彩を感じさせる。また現在もソロで活躍するエディ・リーダーの清冽な歌声と、マーク・ネヴィンによる詩情溢れる楽曲も素晴らしい。全英1位を記録した②はもちろん名曲だが、しみじみと美しい①や③、開放的で気持ちいい④、軽快で洒落た⑨ほか駄曲はない。本作のみで解散したのが惜しすぎる。
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Rocky Sharpe & The Replays『The Fabulous Rocky Sharpe & The Replays』
激しい思い込みと微妙な勘違いが生んだ(?)奇跡のUKパーティー・ロッキン・グループ。ニューウェイヴ全盛期に本気でオールドウェイヴをブチかます心意気に拍手喝采。とはいえピンクの派手なスーツを着て珍妙なポーズを決めている姿が象徴する、ネオロカならぬネオ・ドゥワップ(略してネオワップか?)サウンドにはレイト70s~80s特有のスピード感や享楽性もしっかりあったりする。ツバキハウスやロンドンナイトを賑わせた問答無用のクラブ・ヒッツ①⑤、同世代のロックパイルを即座にカヴァーした嗅覚も光るキラー・モータウン・ビート⑥はじめ、胸躍る好ナンバー揃い!
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Tracey Ullman『The Best Of』
スティッフ・レーベルを代表するガール・ポッパーのベスト盤。本職はコメディアンなのにそのキュートなヴォーカルはかなり胸キュン度高し。ジャッキー・デシャノン作の超アッパーなクラブ・ヒッツ①はもちろん最高だが、カースティ・マッコール作で小沢健二ネタでもあるドリーミーな曲②(邦題は”夢見るトレイシー”!)、ストレイ・キャッツ好きも悶絶のネオロカ・チューン④、思いきりフィル・スペクター風の⑥、66年のモータウン・ヒットをカヴァーした⑬ほか、バラエティに富んだ内容はさながらガール・ポップの大見本市といった雰囲気だ。
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渋谷店AONコーナー紹介
80年代のニューウェイヴやポスト・パンクというと、どこか尖ってアナーキーで、それ以前の時代の音楽とは隔絶した若者的サウンドを想像しがちですが、実際のところは大人の鑑賞にも耐え得る素晴らしく良質な音楽の宝庫でもあったわけです。いまこそAON(Adult Oriented NewWave)という新たな切り口のもとに、ニューウェイヴ世代の大人ミュージックを聴き直してみましょう。
担当者/作品レビュー執筆者紹介
渋谷店 洋楽バイヤー: 北爪啓之
1999年、新宿店入社。洋楽フロアで主にリイシュー物やオールディーズ、はじっこの方のロックを担当。2004年に渋谷店に異動後も洋楽バイヤー一筋(邦楽も好きなんですが)。”フリーメタル”、”カフェ・プログレッシヴ”、”シチュー系”など、ほぼ思いつきで新ジャンルを提唱するも残念ながら世間には浸透せず。それゆえ、これまた私の造語である”AON”だけはどうにか皆様に馴染んでいただきたい思い。 ビーチボーイズではマイク・ラブ、はっぴいえんどでは松本隆、放課後ティータイムではムギちゃん派。なおプライベートでは古本屋巡りと酒場巡礼が趣味。好きな作家は谷崎潤一郎、江戸川乱歩、中井英夫、長嶋有など。趣味の合いそうな人、連絡お待ちしております。
掲載: 2020年05月08日 13:38