WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.76
アーマッド・ジャマル『バット・ノット・フォー・ミー』(1958)
アーマッド・ジャマル(p)
イスラエル・クロスビー(b)
バーネル・フォーニア(ds)
1958年1月16日、シカゴ、パーシング・ラウンジにてライヴ録音
曲目:
01.バット・ノット・フォー・ミー
02.飾りのついた四輪馬車
03.バーモントの月
04.ミュージック・ミュージック・ミュージック
05.ノー・グレイター・ラブ
06.ポインシアナ
07.ウッディン・ユー
08.ホワッツ・ニュー
【アルバム紹介】
1.名ピアニスト、アーマッド・ジャマルの傑作ライヴ盤
2.マイルス・デイヴィスに影響をあたえたピアノ・スタイル
3.名曲“ポインシアナ”の最高の名演を収録
シカゴ出身のハードバッパー、ジョニ―・グリフィンのデビュー作を前回は紹介しました。そのシカゴにはアーゴというジャズ・レーベルがあり、本作はその傑作のひとつです。
ピアニスト、アーマッド・ジャマルは当時シカゴのパーシング・ホテルのハウス・トリオとして活動しており、そこで27歳の時にライヴ・レコーディングされた出世作として名高い一枚となります。
アーマッド・ジャマルのピアノ・スタイルは持ち味である“間”とシンプルなアプローチが独特の空間とリズム・センスを生み出し、マイルス・デイヴィスに大きな影響を与えたことは有名です。マイルスは自身のアルバムでジャマルのオリジナル曲“アーマッズ・ブルース”(『ワーキン』収録)、“ニュー・ルンバ”(『マイルス・アヘッド』収録)を取り上げています。
また、ジャマルは2020年には90歳をむかえますが、まだ現役で活動中であり、人気ピアニスト、上原ひろみの師としても知られ、2003年の彼女のデビュー作『アナザー・マインド』ではプロデューサーをつとめています。
本作で、取り上げている楽曲はガーシュインの“バット・ノット・フォー・ミー”をはじめとするスタンダード・ナンバーが揃っていますが、6曲目の“ポインシアナ”はこのジャマルのバージョンこそがジャズ史に残る同曲の最高の名演とされており、ジャマルにとって代名詞的な1曲であると言えます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
アーマッド・ジャマル= “ポインシアナ”。
アーマッド・ジャマルというピアニストを知るなら、まず何よりも先に本作のこの曲の演奏を聴くのが一番です。
元々はキューバのフォーク・ソングが元になっていると言われている楽曲だけあり、メロディ・ラインはどこかエキゾチックなムードを醸し出しており、そこにラテン風なリズムで表情付けしてゆきます。
テーマのメロディも響きが豊かな中音域のハーモニーとともに奏でられ、オブリガートをほぼ入れず、休符部分、いわゆる“間”を生かした演奏で聴かせています。
延々と続くリズムの上、特に盛り上がるわけでもなく、クールに演奏してゆく様は淡々とした印象を与えますが、最高に心地いいフレーズのループを聴いているようにも思え、8分超えの演奏時間は全然長く感じられないのが不思議なところです。
これがアーマッド・ジャマルのピアノがもつ“魔法”なのかもしれません。
SHM-CD国内盤(一般普及盤)
輸入盤LP
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年05月08日 10:00