WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.86
アーチー・シェップ『アッティカ・ブルース』(1972)
アーチ―・シェップ(ts,.ss)
ジョー・リー・ウィルソン(vo)
マリオン・ブラウン(reeds)
ウォルター・デイヴィス・Jr.(p、elp)
コーネル・デュプリー(g)
リロイ・ジェンキンス(vn)
ジェリー・ジェモット(elb)
ジミー・ギャリソン(b)
ビーヴァ―・ハリス(ds)
ビリー・ヒギンズ(ds)
他
1972年1月24~26日 ニューヨークにて録音
曲目:
01.アッティカ・ブルース
02.インヴォケイション:アッティカ・ブルース
03.スティーム、パート1
04.インヴォケイション・トゥ・Mr.パーカー
05.スティーム、パート2
06.ブルース・フォー・ブラザー・ジョージ・ジャクソン
07.インヴォケイション:バラード・フォー・ア・チャイルド
08.バラード・フォー・ア・チャイルド
09.グッド・バイ・スウィート・ポップス
10.クワイエット・ドーン
【アルバム紹介】
1.フリー・ジャズ系のテナー・サックス奏者であるアーチ―・シェップの異色作
2.R&Bやファンクの要素、ブラス、ストリングス、ヴォーカル、詩の朗読、電気楽器導入の一大音絵巻
3.参加ミュージシャンはフリー系からフュージョン系のプレイヤーまでさまざま
前回のハンク・モブレーに続き、今回もテナー・サックス・プレイヤーの傑作をご紹介しますが、かなり異色な一作を取り上げます。
フリー・ジャズ系のテナー・サックス奏者であるアーチ―・シェップが、1971年に起こったニューヨークのアッティカ刑務所の暴動をテーマとして、レコーディングした傑作です。
ジャズの要素だけではなく、R&Bやファンクの要素、そしてブラス、ストリングス、ヴォーカル、詩の朗読等を盛り込み、楽器もエレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースを導入した一大音絵巻となっています。
それゆえ、クラブ・シーンではサンプリング・ネタとしても非常に人気の高い一作としても知られております。
シェップ自身はテナー、ソプラノ・サックスを使い分け、巧みなプレイを聴かせつつ、独特の世界観を構築してゆきます。
参加ミュージシャンは大勢のミュージシャンが参加しており、フリー系からフュージョン系のプレイヤーまでさまざまで、アコースティック・ベースはコルトレーン・カルテットで知られるジミー・ギャリソン、ギターは後にスタッフのメンバーとして活躍するコーネル・デュプリー、エレクトリック・べースはセッション・シーンで有名な存在だったR&B系のジェリー・ジェモットらが揃い、ヴォーカルにはユニークなスタイルで知られるジョー・リー・ウィルソンらがクレジットされています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
超ファンキーなタイトル曲“アッティカ・ブルース”。
ジャズでいう“ファンキー”とは、ホレス・シルヴァーなどに代表されるハードバップ臭のビート感あふれる演奏を指しますが、この曲はいわゆるR&B臭の“ファンキー”さを前面に出した1曲となっています。
曲が始まると、ワウのかかったカッティング・ギター、ボトムを這うエレクトリック・ベース、ソウルフルなコーラスワーク、シャウトするヴォーカル、そしてストリングスやブラスも加わり、思いっきりソウル&ファンクな展開に「買ったCD間違えた?」と錯覚を起こしそうなサウンドが押し寄せてきます。
すごい高揚感を見せながらも、アーチ―・シェップのテナーらしき音は曲の半ばほどのところでチラッと聴こえますが、この演奏熱のすごさにかき消されてしまっているようにも思えます。
楽曲はシェップのオリジナル曲がほとんどで、他の曲ではシェップのソプラノ・サックスによるアヴァンギャルドで饒舌なプレイや奇才ジョー・リー・ウィルソンの粘っこいヴォーカルも聴けるという、アルバムとしては“ビヨンド・ジャズ”的な一枚といえます。
国内盤SHM-CD(一般普及盤)
国内盤UHQCD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年07月17日 10:00