Stefano Di Battista(ステファノ・ディ・パティスタ)|イタリアのジャズの匠によるエンニオ・モリコーネ・トリビュート『Morricone Stories』
イタリアのベテラン・サックス奏者、ステファノ・ディ・パティスタ。パリを中心に活躍し、イタリア・ジャズ界とのつながりも深い彼が母国イタリアを代表する映画音楽の巨匠、作曲家エンニオ・モリコーネへのトリビュート・アルバムを完成させた。
数々の映画音楽のサウンドトラック・スコアを手掛けてきたエンニオ・モリコーネ。惜しくも2020年に91年の生涯を閉じた彼の音楽は、映画のワンシーンを彩るだけではなく、オーケストラからブルガリアのコーラス隊、さらにはオカリナのクインテットまで、ありとあらゆる編成、形態、アレンジで演奏されても等しく魅力的な光を放っている。その中でも特にジャズとの相性は格別だと言ってもよいだろう。モリコーネの音楽が持つエモーショナルなメロディと知的なハーモニーは、ジャズという音楽スタイルにも共通するものだからだ。そして今回、ステファノ・ディ・パティスタというベテラン・ジャズ・サックス奏者によって、モリコーネの楽曲はまた新たな音色を纏うのである。
本作『MORRICONE STORIES』で、ディ・バティスタは、500本以上の映画作品に音楽を提供してきたモリコーネの作品の中から、世界的に有名な代表作とも呼べるものから、「Veruschka(ヴェルーシュカ)」や「What Have You Done to Solange? (Cosa avete fatto a Solange?)(ソランジェ 残酷なメルヘン)」など比較的“マイナー”な映画作品や楽曲も取り上げている。いずれの楽曲も彼の手により、素晴らしいジャズ・スタンダードに生まれ変わっている。例えば『Metti, una sera a cena(ある夕食のテーブル)』のテーマはウィットに富んだスウィングにアレンジされ、『The Good, the Bad and the Ugly(続・夕陽のガンマン)』のテーマでは楽器と楽器との熱のこもったインプロヴィゼーション対決が楽しめる。また『Once Upon a Time in America(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ)』の「デボラのテーマ」ではエモーショナルたっぷりの演奏があり、『The Mission(ミッション)』ではオリジナルのオーボエのパートをソプラノ・サックスに置き換えたアレンジを聞くことができる。さらに注目すべきは、今回が世界発演奏となるモリコーネの未発表曲「Flora」が収録されていることだろう。アルバムのアレンジとアーティスティック・ディレクションは、ディ・バティスタとフレッド・ナディンが手掛けている。
その独創性と質感、そしてメロディで映画音楽に大きな影響を与えたエンニオ・モリコーネ。彼と同じイタリアのアーティスト、ステファノ・ディ・パティスタの『MORRICONE STORIES』によって偉大な巨匠の音楽的遺産がジャズ・スタンダードとして新たな普遍性を身に着ける――。
収録内容 01. Cosa avete fatto a Solange (From『What have you done to Solange?』) 02. Peur sur la ville (From『Fear over the City』) 03. La cosa buffa 04. Veruschka 05. Deborah's Theme (From『Once Upon a Time in America』) 06. Metti, una sera a cena 07. Apertura della caccia (From『1900』) 08. Il grande silenzio (From『The Great Silence』) 09. Flora 10. La donna della domenica (From『Sunday Woman』) 11. Gabriel's Oboe (From『The Mission』) 12. The Good, the Bad and the Ugly
タグ : 映画
掲載: 2021年03月29日 12:39