山下達郎『POCKET MUSIC』|TOWER RECORDS LOVES...TATSURO YAMASHITA
初のデジタル録音によりメロディやサウンドが近年の作風に近づいた8作目。
1986年の本作よりデジタル録音とコンピューターサウンドを導入、制作過程の試行錯誤と格闘を経て生まれたメロディやサウンドは以前より大きく変化、それまでのシティポップ全開のサウンドに普遍的な雰囲気が加わり、近年のエヴァーグリーンな作風の礎を作ることとなった、まさに転換点といえる8作目。収録曲も「土曜日の恋人」「ポケット・ミュージック」「風の回廊(コリドー)」などの名曲群をはじめ、エヴァーグリーンな輝きが眩しい高水準ポップスがズラリとならぶ傑作。(タワーレコード 藤瀬 雅文)
アナログからデジタルレコーディングへ、ターニングポイントになった作品。
前作までアナログのレコーディング機材だったのが、このアルバムからデジタル機材で作られており、時代の流れとして泣く泣くデジタル機材に切り替えて、試行錯誤して作ったアルバム。にも関わらず、だからこそ、逆にヤマタツの飽く無き音へのこだわりがひしひしと伝わってくるアレンジになっていて、痺れます。明らかにデジタルな音なのに、濃密なポップスになっているところ。シングル曲もしかり、アルバム曲も全曲最高。中でも「LADY BLUE」は絶品で、分厚い音と壮大なバラードに加えて、真骨頂でもある分厚いコーラスワークといった、この時期のヤマタツの新基軸の誕生も垣間見える作品。30周年盤のライナーより、”もしこのアルバムを今まで通りアナログ機材で作れていたら、自分でも最高傑作になったかもしれない作品”とのことです。(タワーレコード 油座 友里恵)
アナログとデジタルの狭間で産み出された苦労作!
制作環境がアナログからデジタルへと移行する過渡期に制作された8作目のスタジオ・アルバム。まさに今の世の中を表すタイトル曲(2)、悲痛な叫びに似た大村憲司氏のギター・ソロが胸を打つ(6)、初のデジタル・レコーディング作となった(10)など、自身の作曲・編曲のアイデアも技術の進歩とともにますます漲る瑞々しい作品。ただ当時のハード・ソフトの限界には不満爆発、愚痴っぽいコメントしか思い浮かばない(笑)というこのアルバムは、リリース当時達郎さんにとって到底満足できる我が子ではなかったものの、その分思い入れが強い作品であることもまた事実。ここでの試行錯誤が、後の竹内まりやの名盤『リクエスト』に繋がっていくので、一つのターニング・ポイントともなった一枚。(タワーレコード 加藤 信喜)