WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.283
ジョン・アバークロンビー『サーガッソーの海』(1976)
ジョン・アバークロンビー(el-g, acoustic-g)
ラルフ・タウナー(12 string-g, classical-g, p)
1976年5月19日、オスロ、タレント・スタジオにて録音
曲目:
01.伝説
02.並木道
03.サーガッソーの海
04.オーヴァー・アンド・ゴーン
05.エルボウ・ルーム
06.ステアケイス
07.ロマンティック・ディセンション
08.パラソル
【アルバム紹介】
1.ジョン・アバークロンビーとラルフ・タウナーによる美しいギター・デュオ
2.楽曲はすべて二人のオリジナル楽曲で構成
3.エレクトリック、アコースティックの両ギターによる透明感あふれる響き
前回ギタリストのアルバムを取り上げましたが今回もギタリストのアルバムを紹介します。
名ギタリスト同士、ジョン・アバークロンビーとラルフ・タウナーによる美しいギター・デュオです。
ドイツの名レーベル、ECMの名盤になります。なおECMレーベルは2024年は創設されて55周年の記念年にあたります。
二人ともいわゆる“ジャズ・ギタリスト”というスタイルではなく、音の響きを大切にしながら、流れるようなフレージングで透明感あふれるプレイを演出するギタリストで、本作ではお互いの個性を存分に引き出しながらも、見事なデュオ演奏で魅了します。
楽曲はすべて二人のオリジナル楽曲で構成されており、ジョン・アバークロンビーが1、2、4、7、ラルフ・タウナーが6、8、そして二人の共作が3、5となっています。
ギターはジョン・アバークロンビーはエレクトリック・ギター、アコースティック・ギターを使い分け、エレクトリック・ギターでのプレイでは時に歪み系のサウンドと深いエコーをかけたエフェクトで幻想的な音響空間を作り出し、ラルフ・タウナーは12弦ギターとクラシック・ギター、そして時にピアノを演奏し、幽玄な響きを醸しだしています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
静寂の中から聴こえてくるような深淵な“伝説”。
冒頭から広がるイマジネイティヴなコードの響き、ジョン・アバークロンビーはエレクトリック・ギターを、ラルフ・タウナーは12弦ギターを演奏しているのが分かります。曲は奥深く響きあう2人のギターから繰り出されるフレーズで進行してゆきます。最初はジョン・アバークロンビーがエレクトリック・ギターによる夢幻のフレージングで魅了します。そうして曲が半分ほど過ぎたあたりで、ラルフ・タウナーのクラシック・ギターのソロが始まります。バックに12弦ギターの響きが鳴っている中でのソロはおそらくオーバー・ダビングによるものでしょう。やがて、ジョン・アバークロンビーのエレクトリック・ギターが再び戻ってきた後はほぼ即興による展開になってゆき、そのまま静かに曲を終えます。聴き終わった後に残る不思議な余韻はECMならではのものですね。シンプルで雰囲気のある、素朴なジャケットのアートワークも本作の魅力のひとつです。
ジョン・アバークロンビーとラルフ・タウナーのこのデュオは本作の5年後にその続編ともいうべき『ファイヴ・イヤーズ・レイター』というアルバムでも共演しており、そこでも本作で聴かせているようなギター2本による深淵な世界を披露しています。
残念なことにジョン・アバークロンビーは2017年に惜しくもこの世を去ってしまいましたが、ラルフ・タウナーは現在84歳で、2023年には新録音によるソロ・ギター・アルバム『アット・ファースト・ライト』をリリースし、まだまだ現役であることを伺わせました。
国内盤SHM-CD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年07月05日 10:00