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第20回 ─ シンプルにして柔軟さを備えたバンド、キングス・オブ・レオン

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2004/12/02   14:00
更新
2004/12/02   16:11
テキスト
文/久保 憲司

『NME』『MELODY MARKER』『Rockin' on』『CROSSBEAT』など、国内外問わず数多くの音楽誌でロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る週間日記コラム。今週は新作をリリースしたばかりのキングス・オブ・レオンについて。

2004年11月29日(月) KINGS OF LEON『Aha Shake Heartbreak』

  最近イギリスのロックが盛り上がっているのは「ダンス・ミュージックに飽きたからだろう」と思っていたのですが、どうもX-FMというオルタナ・ラジオ局の力が大きいみたいですね。あと、ケラングという元ヘヴィメタ雑誌がこの辺の音楽をちゃんと紹介するようになったのも大きい。今までこの手の音楽って頭でっかちの学生みたいな人たちに牛耳られていた感があるから。

 X-FMというのはジョン・ピールやアニー・ナイチンゲールのような幅広い選曲のDJたちというか、〈世間が本当に聴きたい音楽をかけよう〉という主旨の基始まった画期的なラジオ局でした。残念ながら今はヘヴィ・ローテーションとかがばんばんあってお金の匂いが結構してますけど、でもこういうラジオ曲が日本にもあったらいいですね。

 今イギリスで人気のあるバンドの中で、ぼくの一番のお気に入りはキングス・オブ・レオンです。デビュー・アルバム『Youth And Young Manhood』をイギリスで50万枚売って今や飛ぶ鳥を落とす勢いの彼ら。前にサマーソニックで見たときは、南部のバンドっぽいけどもう一つ泥臭さと骨太さが足りないなと思っていた。でもそれは、「彼らの父親が福音伝道師で南部の教会を演奏して回る生活をしていた」とかそういうイメージによってぼくの中で生まれた偏見でした。

 先日発売されたセカンド『Aha Shake Heartbreak』は何か80年代後半のイギリスのインディ・バンドのようだ。あの当時のバンドはどれもセールス的にうまくいかなかったけれど、それは内省的過ぎて自家中毒に落ち入っていたんじゃないかと僕は思っている。しかし、キングス・オブ・レオンはシンプルな音楽をアイディアの一つとして取り入れ、力強く演奏している所に共感してしまう。とても不思議なバンドです。

  カート・コバーンが何をやってもピクシーズのモノマネから抜けられないと自己嫌悪に落ち入っていたのは有名な話ですが、キングス・オブ・レオンは自分たちが目にするもの、耳にするもの、経験することをすぐ自分たちのものに出来る魔法を持っているような気がしてなりません。彼らがお父さんと共に旅をしながら見知らぬ人たちの前で毎日演奏していたことと関係があるのかもしれません。

 キングス・オブ・レオンはまだイギリスだけでしか大きなヒットを出していませんが、こういう彼らの柔軟さを見ていると、とんでもなくビッグなバンドになるかもという気がしてなりません。ライヴの感じも今は変わっているんだろうな、ライヴも早くみたいです。