『Harvest』~『Harvest Moon』から連なる三部作の最終章が静かに世に問いかける……

「ひとつ言えることがある、それもはっきりと言えることが。それは私は死にはしないということさ」。
最新インタヴューでの彼からのメッセージだ。ニール・ヤングが脳動脈瘤で入院したというニュースが流れたのが今年4月。手術を行って体調は順調に回復したと知らされたが、ちょうどその時、彼はナッシュヴィルで『Harvest』から連なるトリロジーの最終章となる新作のレコーディングの真っ最中だった。アルバムに彼のそんな体調が反映されているか? あるようなないような……正直判断できない。ま、ないはずはないんだけれども、そもそも『Harvest』の続編的作品なのだから、本作の穏やかな表情を安直に病気と直結させることはできない(そういえば、あのアルバム制作中も彼はヘルニア治療中だった)。
起伏の激しいニールのディスコグラフィーにおいて、〈静の象徴〉として認知されている72年作『Harvest』。ストレイ・ゲイターズのカントリー味溢れる演奏によるメロディアスな楽曲が並んでいることも特徴のこのアルバムは世評も高いが、ニール自身も常時好きな作品の上位に置いている。そして先のバンド、ジェイムス・テイラーとリンダ・ロンシュタット、ジャック・ニッチェらをふたたび招いて作った92年作『Harvest Moon』(この時も聴覚過敏症に苦しんでたという話もあったな)。〈静の部分〉ということと同時に、彼の魅力の一部でもある黄昏味が発揮されたアルバムでもあるのだが、このたびリリースされる完結編『Prairie Wind』も同様に、暮れかかった空のような色彩を持ったアルバムに仕上がった。サウンドはまさしく前2作の延長線上にあり、メロウな情感を表現するニールの歌声もいかにも『Harvest』的。エミルー・ハリスのバック・ヴォーカルにメンフィス・ホーンズなどの色づけ具合もよく、楽曲のクォリティーで言えば『Harvest Moon』を超えている。しかし、なぜこの時期に?という理由はわからない。
例えば『Harvest』の時にはヴェトナム戦争があり、『Harvest Moon』の時は湾岸戦争があって……そのラインを推測することは容易い。ま、ないはずはない。『Are You Passionate?』『Greendale』という近作には、〈9.11〉やイラク戦争という出来事の影がぴったりと張り付いていたが、今作にもそれを垣間見ることは可能。それにしても、ラスト“When God Made Me”のゴスペル・ライクなナンバーの厳かな響きが胸に染み入る。
▼文中に登場したニール・ヤングの作品を紹介。