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第79回 ─ TEENA MARIE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2006/07/06   22:00
ソース
『bounce』 277号(2006/6/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

唯一無二の女性ファンカー、その功績を再確認!


 白人アーティストが黒人聴衆に支持されること自体は珍しいことではない。だが、キャリアを通じて〈R&Bの人〉と認められる者は数少ない。ティーナ・マリーは、そんな数少ない白人R&Bアーティストのひとりだ。

 ポルトガル系とアイルランド系の血を引くティーナは南カリフォルニアの出身。黒人やラティーノに囲まれて育ち、20歳を迎えた76年にモータウンと契約。ギターやキーボードを操る彼女は当初裏方活動がメインだったが、リック・ジェイムズと出会い、79年に彼のバックアップでデビュー作『Wild And Peaceful』を完成させる。翌年にはみずからの愛称を表題に冠した『Lady T』を発表。その間、恋人であったリックとの共演は続くも、以降はセルフ・プロデュースで作品を生み出し、独立独歩の女性ファンカーとして実力をアピールした。83年にはエピックに移籍し、ジャジー・Bも関与した90年の『Ivory』まで5枚のアルバムをリリース、多くのシングル・ヒットも生んだ。その後、自身の活動は94年に自主レーベルからアルバムを出す程度に止まったが、並行してヒップホップ方面から再評価の気運が高まり、本人もスヌープ・ドッグやドミノらの作品に客演を重ねていく。

 そんな彼女が21世紀に入って契約したのはキャッシュ・マネーだった。2002年のサントラ『Undisputed』への参加を経て、2004年には10年ぶりのアルバム『La Dona』で再スタート。無理なく現代性も備えた同作は大ヒットした……が、直後にかつての盟友リックが他界。このたび2年ぶりに登場した新作『Sapphire』は、そんなリックに捧げられた作品だという。だからなのか、今回はかつてリックと共演したスモーキー・ロビンソンとデュエットするなどモータウンらしさも随所に薫る。一方、ヒップホップ界から愛されてきた彼女らしくコラプトらとの共演なども用意。が、何より凄いのはいまも変わらないエモーショナルな歌声だろう。サファイアのように澄んだヴォーカルで、ティーナはいまもR&Bを歌い続けているのだ。
(林 剛)

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