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第92回 ─ 忌野清志郎

連載
NEW OPUSコラム
公開
2006/09/28   20:00
ソース
『bounce』 280号(2006/9/25)
テキスト
文/桑原 シロー

夢を諦めない方法はすべてここに詰まっている。盟友が集った新作は聖地・ナッシュヴィル録音!!


『夢助』という題を見て、とっさにニッキー・ホプキンズの名盤〈夢見る人〉を思い浮かべた。あれは、ロンドンっ子のニッキーによる、アメリカ音楽に対する夢見る気持ちを甘いオブラートで包んだ素敵な作品だった。さて本作はどうだろう?とパクッと頬張ってみる。すると、オブラートが溶けてソウルフルなクロ飴が出てきた。口溶けは甘いけれど、後味がしょっぱい。これはいかにも清志郎テイストだ。

 本作は、ブッカー・T&ザ・MG'sの元ギタリスト、スティーヴ・クロッパーらといっしょに5月下旬から6月半ばにかけてレコーディングされたもので、カントリー音楽のメッカ、テネシー州ナッシュヴィルのスタジオにツワモノ・プレイヤーたちが揃い、夢のセッションが繰り広げられた。92年の『Memphis』の続編? シングル・リリースのみに終わったナッシュヴィル録音企画盤への落とし前? どうとも取れる。それにしても、清志郎はいつになく居心地良さげだ。黄金色のサザン・ソウル・サウンドをバックにオーティス・レディング愛を膨らませながらシャウトする彼の背中から、ほこほこと湯気が立ち昇っている。イエローな湯気が。

 また今回、彼の夢の実現を助太刀するマブダチらも揃った。仲井戸“CHABO”麗市、三宅伸治、そして細野晴臣が楽曲の共作という形で参加。そのメロディーからふと、〈僕らはいつでも君の傍にいるよ〉という声が聞こえた気がした。清志郎と夢を共有したい者たちの思いがメロからこぼれ落ちてくるのだ。思わず清志郎とその3人の顔が並ぶ4つ葉のクローバーが思い浮かんだ。そういえば〈RCサクセションがきこえる〉と歌われる曲(“激しい雨”。チャボとの共作)がある。これはあの眩しく暑かった夏への追憶。ほとんどの曲に共通するテーマ。このほんわりしたセンティメンタリズムに胸焦がす人は多かろう。

〈夢〉を目深に被り、がむしゃらにダイヤモンドを駆け巡る清志郎が見える。それはすごく幸せな光景だ。本作は、この先もずっと彼の新曲が届けられますように、と願う人たちに夢を運ぶ一枚となるはず。信じよう。

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