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第128回 ─ ENTRANCE TO RAI

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/03/29   20:00
ソース
『bounce』 285号(2007/3/25)
テキスト
文/サラーム 海上

再興の機運も高まる〈ライ〉って何だ?

 20世紀前期にアルジェリアの港町オランで生まれた、〈マグレブのブルース〉ことライ。初期のライはフレーム・ドラムの〈ストトト〉と繰り返される単調なリズムと、砂漠を思わせる乾いた葦笛、そして満たされない青春期の想いを悩ましいコブシと共に歌うのが音楽的特徴だった。ライが初めて国際的に注目されたのは88年。フランス人のマルタン・メソニエがプロデュースし、当時の先端だったエレクトロ・サウンドを採り入れたシェブ・ハレド&サフィ・ブーテラの『Kutche』がきっかけだった。そして今回、ライ黄金期を回顧する新シリーズ〈Maghreb Soul〉から、コンピ『Maghreb Soul -Rai Story 1986~1990』が登場。ライの女王こと故リミティが太鼓と葦笛をバックに唸りまくるライの原型から、シンセやドラムマシーンを採り入れたシェブ・マミやファデラによるポップ・ライ、ラヴソングを歌って、後にイスラム原理主義者に暗殺されたシェブ・ハスニや帝王ハレドなどの勢いに満ちた15曲が収録されている。

 そして、現在のライを語るうえで外せないのが、クラッシュの名曲“Rock The Casbah”のカヴァーで注目されたアラビック・ロッカー、ラシッド・タハだ。パンクに影響を受け、80年代初頭から唯一無二のアラブ・ロックを歌い続けてきた彼は純粋なライ歌手とは言えないが、ポップ化で本来の姿を見失いつつあるライを超えて独自の境地に到達した。このたびのベスト盤『The Definitive Collection』にはロックやテクノも採り入れる一方で、マグレブの過去の名曲をも歌いこなすタハの四半世紀に及ぶ軌跡が記録されている。