いまいちばんフレッシュなラッパー……ふざけててもコイツは天才だよ!!

未知のニュー・スタイルが出てきたらとりあえず飛びついておいて、そこでゴチャゴチャどうでもいい定義付けをこねくり回すことだけに腐心するメディアが多すぎて、がっかりしてしまう。輸入盤しかなくても、DJシャドウが推薦しなくても、ハイフィーだろうが何だろうがベイエリア・ラップは厳然と存在していて、新しい才能が続々と登場してきているのよ!
と、少々ボヤいてしまうのは、ベイエリアの伝統と革新を同時に体現する、このミスターFABのニュー・アルバム『Da Baydestrian』が素晴らしすぎるからだよ。故マック・ドレー以来の伝統に則ったコミカルな表情でジャケに収まるこの男は、2005年の『Son Of A Pimp』とそこに収められた“Super Sic Wit It”のヒットで注目を集めたオークランドのフリースタイル・キングである。もともとバトルMCとしても鳴らした(そのへんの様子は新作のボーナスDVDで確認できる)という彼は、昨年あたりからトゥー・ショートやドゥループ・E&B・スリム、DJシャドウ、ザイオン・アイ&ザ・グラウチ、そしてパック……とGモノもアングラも若手もヴェテランも関係なく膨大な客演を繰り広げ、一躍ベイの顔役に昇り詰めた(なお、P93で紹介しているグルーヴ・アルマダの新作にもFABは登場)。そうした好況を受けた今回の『Da Baydestrian』では、スパイス1やキーク・ダ・スニーク、メッシー・マーヴらベイの先達たちがドッと駆けつけ、全国区的には無名ながらアイデアだけは豊富な職人連中によるカラフルなビートで大暴れする凄まじい作品になっている。エモいハイフィーもエロいマイアミ・ベースも熱いクランクもエグいトラップ・ビーツもすべて等しく呑み込む、FABのフレキシブルなラップにもハッとさせられるだろう。これこそ旬な男の旬な傑作だよ! 絶対に聴くべき。
▼ミスターFABが客演した作品を一部紹介。