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第166回 ─ くるり

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/07/05   17:00
更新
2007/07/05   18:01
ソース
『bounce』 288号(2007/6/25)
テキスト
文/桑原 シロー

ワルツを踊る音楽の〈みやこ〉での生活から生まれた意欲作!!


 絶対スゴイものが生まれるはず――今回の前情報にはそう信じさせる力があった。くるり、音楽の〈みやこ〉へ。このある種運命的な展開に、微笑を漏らす人は多かったのだ。彼らはウィーンにアパートを借りて長期のレコーディングを敢行。録音はパリでも行われ、プロモ・クリップ撮影はベルリンで、と数か月をかけてヨーロッパを巡った。で、その結果は……。

 岸田繁は本作の音楽について、〈テレヴィジョンとザ・フーがバルトークやショスタコヴィッチと相撲を取っている感じ〉と表現していたが、そのワケのわからなさ具合が何よりの魅力と、とりあえず言うことが可能だ。“ハイリゲンシュタット”と名づけられた幕開けのインストから、シングル“ジュビリー”(名曲!)への流れ。描かれる世界の揺れ(風景がマクロになったりワイドになったりとカメラがひっきりなしに動くような感覚がある)が生み出す緊張感は、いままでのくるり体験において未知のもの。そして複雑に糸が絡み合うかのような弦の音色と、くるり風情の合体。不思議な感触だ。ただ、そんな曲ばかりでなく、アナログのぬくもり感タップリのロック/フォーク・ナンバーもあり。はっきり言えるのは、彼らは戦うようにしてこの作品を勝ち取ったんだなってこと。さまざまな人種が入り乱れた環境で、血と汗と涙を流しながら作り上げた意欲大作。長く愛聴できる一枚だ。