KRS・ワンとマーリー・マール、驚愕の合体が実現! ヒップホップは死なないぜ!!

凄いことが実現しているのですよ! ヒップホップにおけるバトルの概念や在りようをわかりやすい形で繰り広げたKRS・ワンとマーリー・マール、いわゆる〈ブリッジ・バトル〉の当事者2人が合体してアルバムをリリースしたのだ。その名も『Hip Hop Lives』。タイトルだけを見ればナズの『Hiphop Is Dead』にオールド・スクーラーが異を唱えたような格好ではあるが、実際には両者の間でもっと前から温められていたコラボ企画らしい。主旨としては、とかく血なまぐさく暴力的な〈ビーフ〉に発展しがちなMC/DJ同士のバトルが、本来は単にスキルを闘わせる手段であるということを示すためのものだったという。しかしながら、〈ブリッジ・バトル〉とは何だったのかを知らなければ、このアルバムの意義やおもしろさは半減してしまうだろう。ということで……。
時は86年。発端となったのはマーリー・マールがプロデュースしたMCシャンのシングル“The Bridge”だった。クイーンズブリッジをレペゼンする彼らが、そこで〈クイーンズこそヒップホップ発祥の地〉とリリックで表明した(ようにも解釈できる)ため、同じNYのブロンクスをレペゼンするKRS・ワン~ブギー・ダウン・プロダクションズが〈ヒップホップはブロンクス生まれだぜ!〉と噛み付くアンサー・ソング“South Bronx”をリリースしたのだ。これに対してシャンとマーリーは“Kill That Noise”と返し、さらにブギー・ダウンは“The Bridge Is Over”と応戦し……という一連の流れが、ラップを通じたブロンクスvs.クイーンズの無血戦争=〈ブリッジ・バトル〉であり、音楽史上最大のレコードを介した闘いとなったのである(そこから生まれた曲がクラシック揃いなのも凄い)。
つまり、今回の『Hip Hop Lives』は、バトルの本質が憎み合いであってはならないことを無軌道な若僧たちに知らしめるための作品なのである。相変わらずゴツいKRSのラップは清々しいほど自信満々だし、ややご無沙汰感のあるマーリーのトラックも随所に〈ブリッジ・バトル〉の痕跡を潜ませたストリクトリーなものだ。耳を貸すべき。