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第192回 ─ EL CANTANTE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/08/30   17:00
更新
2007/08/30   17:37
ソース
『bounce』 290号(2007/8/25)
テキスト
文/T-Rod.

ラテン音楽シーンのスーパースター夫妻が主演した話題の映画のサントラが到着!!


 いや~、痛快痛快。サルサのみならずラテン・ポップス界最大のアイコン、マーク・アンソニーのニュー・アルバム『El Cantante』がリリースされた。これが、マークがあのエクトル・ラボーを演じて話題となっている同名映画のサントラなのだ(アメリカでは先日公開されたばかりだが、残念ながら日本公開は未定)。映画には奥方のジェニファー・ロペスも出演、もちろんこのサントラにも参加し、美声を披露している。

〈El Cantante De Los Cantantes〉・・つまり、〈歌手のなかの歌手〉。人はエクトル・ラボーのことをそう呼んだ。まさに歌うべくして生まれてきた人物と言えよう。サルサという音楽を生業にしようと思った瞬間からある意味不幸な人生を歩むことになった彼の物語を映画は描き出す。16歳で故郷プエルトリコからNYへ移住し、歌手としての仕事を得たラボー。当時、隆盛を極めていたサルサの代名詞的なレーベル、ファニアの看板歌手の一人として活躍した。が、一方ではドラッグ中毒による入退院を繰り返し、自殺未遂を起こしたりと壮絶な人生を歩んだのであった。

 さて、このアルバムの内容だが、ラボーの往年のヒット曲カヴァー集となっている。冒頭のタイトル曲に始まり、盟友であるウィリー・コローンと作ったナンバーが次々と登場するわけだが、とにかくマークの歌がラボーとそっくりなのである。まるでラボーが取り憑いたんじゃないか?と思えるほどなのだ。 

 過去にサルサ歌手のドミンゴ・キニョーネスがオフオフ・ブロードウェイ(NYの小劇場)でラボーのミュージカルを演じたことがあったが、あの不世出のスーパースターを演じるのに現在はこのマーク・アンソニーほど相応しい人物はいないであろう。マークのサルサ界への再デビューの年にラボーは他界した。そして、新たなヒーローの登場は、NYやプエルトリコの人々を大いに興奮させたものだった。そんなことをこのサントラを聴きながら思い出していた。

 う~ん、それにしても似ている。声、雰囲気、歌の表情などその激似ぶりについては、過去のラボーの諸作品とぜひ聴き比べてみてほしい。