ドクター・ジョンが熱く語るこの街の猥雑さよ。自伝「フードゥー・ムーンの下で」を読みつつ聴くリー・ドーシー“Do-Re-Mi”のオリジナル七吋皿、その瞬間〈シノギを削る音 in 60's音楽シーン〉が聴こえ、ニューオーリンズR&Bの底なし沼にズボっ!とハマッてしまった。そして、いまだ抜け出せず、今年も夏を迎えてしまった。ならば一人でも多くの犠牲者を出しちまおうってことで今回はコレだ! ウシシシ、旅は道連れだぜ。
前述のリー・ドーシー。ワン&オンリーな唄い手の『Holy Cow -The Very Best Of Lee Dorsey』(Snapper)は、“Do-Re-Mi”はもちろん、〈ミーターズ+歌〉の最高峰“Lover Was Born”、ガキんちょも狂喜乱舞タイトゥン・アップ系鬼ファンク・チューン“Four Corners”を同時収録! ゆえに多数あるベストからこの盤に決定。これらを聴かずにあっさり死ぬなよ!と叫んでおく。
で、お次はこの街の仕掛人であるアラン・トゥーサンだ。50's後半の楽曲を収めた編集盤『Complete“Tousan”Sessions : The Wild Sound Of New Orleans』(Bear Family)を。これがのちの洗練とは無縁の超ワイルド・ロッキン・ピアノ盤。オモロ名曲“Java”収録。ユルい曲でもビートはビムビム!がココの流儀。痛快だ。こんな音、他所にはナイぜ。
それからシャーリー&リーの『Let The Good Times Roll』(Ace)も。一度聴いたら忘れられないシャーリー嬢の歌声はほとんどサザエさん家のタラちゃんだ。そして相方はこれで10代?なドシブ声の持ち主、リー君。この二人の超コミカル&超コントラストなデュエットが、腕っこき演奏家のアール・パーマーが叩き出すエグいビートでロッキンするからタマラン。
ラストはヒューイ・スミスで『Best New Orleans Sound』(Pヴァイン)を。お馴染み“Don't You Just Know It”などの激アガりチューンからクラッシュの『London Calling』を経験済みなら瀕死の“Sea Cruise”収録が嬉しい。だってこのイントロは……“Wrong 'Em Boyo”! ラフでタフでユニークな楽曲は世代を越えて響きやがりました。
というわけで今回選んだディスクのほとんどがベスト盤だが、シングル単位で音楽を聴く時代ならではの〈一曲にかける意気込み〉を全身で受け止めてみてほしい。聴いた瞬間、世界が変わる。オレは変わった。また会おう! ズブズブズブ……。
PROFILE
サイトウジュン
東京から南をめざして、結局どこかに辿りついちゃった!オモシロ音楽――そんなんを無礼講な演奏でフロア&お茶の間に投下し続ける懲りない6人組のインストゥルメンタル楽団=YOUR SONG IS GOODのオルガン/リーダーその他モロモロ担当。東京生まれ、神戸育ち。現在、都合の良い時は関西弁の34歳。問答無用の三十路全力投球セカンド・アルバム『HOT! HOT! HOT! HOT! HOT! HOT!』(KAKUBARHYTHM/NAYUTAWAVE)はもちろんず~っとリリース中!!