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第210回 ─ あふりらんぽ

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/09/20   13:00
更新
2007/09/20   16:50
ソース
『bounce』 290号(2007/8/25)
テキスト
文/ダイサク・ジョビン

原始的で、宇宙的で、神聖さすら覚える驚愕の衝撃作!!


 オニ(ギター/ヴォーカル)とピカ(ドラムス/ヴォーカル)の2人は2004年に、アフリカの密林に暮らす〈地球上でもっとも音楽と密接な生き方をしている〉ピグミーのバカ族と1か月間共同生活をし、2006年に『バカが来た!』という作品を発表したが、そこには楽しそうに一日中子供たちと歌って歌って歌いまくったり、プリミティヴなリズム&歌&踊りでトランス状態になったり、精霊たちの存在を感じさせる文字どおり大自然の音などが収められていた。彼女たちはそこで人間が音楽を歌い、演奏する根源的な何かを感じ取った結果、今回リリースされる新作『スートブレイコー』のような音楽を作り上げたのかもしれない。2年前、弱冠20歳で〈野蛮娘2人によるすっぽんぽんロック〉という謳い文句と共に『URUSA IN JAPAN』でメジャー・デビューして以来、アヴァンギャルドでノイジーなサウンドの上で、幼児レヴェルの言葉を連発&絶叫しながら暴れ回る過激な女の子2人組、っていうのが彼女たちの一般的なイメージだろうか。ただ、未知の音楽的境地に達したともいえるこのアルバムで、そんなイメージは一気に刷新されることになるであろう。

 42分間ノンストップで繰り広げられる壮大なスケール感を持つ今作は、ギターとドラムと2つの声という演奏スタイルはこれまでと変わらないが、ロック・バンド的フォーマットはほとんど見受けられない。最小限の音数で発せられる、深いリヴァーブのかかったプリミティヴで神秘的な楽器音とシャーマン&巫女的な歌声、そして広大さを感じさせる音のないスペースのほうが際立つといったサウンド作りで、ただただ波のうねりのようにさまざまな表情を持った〈音〉の塊が寄せては返す。真夜中の山奥、大自然のなかで松明の灯りだけを頼りに行われる神聖な特殊祭事や原始宗教の儀式といったイメージを喚起する音楽。理性が後退していき、身も心もまっさらな状態になって無我の境地にそっと連れていかれて、すべてを浄化・リセットするような幽玄なる音楽。幼児のように純粋無垢で本能に直結した野性と並外れた知性が神秘的なバランスを保った状態のなか、研ぎ澄まされた感性によって自由奔放に奏でられる、めいっぱいの生命力に溢れた、湧き出す清水のように透明で澄み切った、神々しくて美しい音楽――によって、世界はさらにあふりらんぽに熱中することだろう。

▼あふりらんぽの作品を紹介。