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第27回 ─ アレサ・フランクリンに新たな輝きを与えたアリスタ時代と数々のコラボ

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2008/01/24   20:00
ソース
『bounce』 294号(2007/12/25)
テキスト
文/林 剛

[ 連載 ]ソウル・ミュージックの光と影 ソウル遺産を新たな視座からリフォーマット。今回は女王の80年代以降を辿る番外編です!!


 女王様の周辺が賑やかだ。2007年はアトランティックに移籍してから40年という節目でもあったアレサ・フランクリン。アトランティック関連では、盟友ジェリー・ウェクスラーの監修によるレア&未発表音源集をはじめ、フィルモア・ウェストでのライヴ盤(2枚組ヴァージョン)の日本盤化、72年にフィラデルフィアで行われたライヴの初音盤化と、彼女の〈黄金期〉とされるアトランティック初期~中期の音源が立て続けに発掘~復刻された。だが、アレサが女王としての地位を揺るぎないものとしたのは、80年から現在まで所属するアリスタでの活躍あってこそでもある。と、そんな論を後押ししてくれるかのように、その時期の音源リイシューも続いてきた。コラボ曲を集めた企画盤『Jewels In The Crown : All-Star Duets With The Queen』の登場と同時に、日本ではアリスタ時代のアルバム6枚が紙ジャケでリイシュー、さらに英国からはR&B評論家のデヴィッド・ネイザンが監修したコンピ『Dedicated To Soul』にルーサー・ヴァンドロス制作のお蔵入り曲が収録されるなど、まるで女王復活祭とでもいった今日この頃なのだ。

 大雑把に言うとアリスタでのアレサは、アトランティック時代と同じくソウル~ポップスを跨ぐヒットメイカーを起用しながら、さらにクロスオーヴァーな展開を試みたという感じだろう。もちろん、90年代以降もローリン・ヒルやパフ・ダディらと組んだりしたように黒人音楽が軸であることは大前提なのだけど、〈ソウルの女王〉がソウルの枠を超えて、いわば〈全能の女王〉となったのが、このアリスタ時代だったのではないか。

 そして、そんな全能ぶりをさらに印象づけたのは、先述の『Jewels In The Crown : All-Star Duets With The Queen』に収録されているアリスタ時代のコラボ/デュエット曲の数々だったと言っていい。過去音源(ヴァージョン違いもあり)に新曲を加えたこの企画盤には、ホイットニー・ヒューストンやメアリーJ・ブライジといったR&Bアクトとの競演のほか、キース・リチャーズ、ユーリズミックス、ジョージ・マイケル、フランク・シナトラ、エルトン・ジョンらとの異種交流的な競演曲を収録。新曲としては、アレサと同じく10代でシングル・マザーとなったファンテイジアとの“Put You Up On Game”と、サム&デイヴ曲を引用したジョン・レジェンドとのソウルフルな“What Y'all Came To Do With”も収録されており、アレサはドッシリとした歌唱で旬のスターを迎え撃っている。女帝の王冠は、本人のロイヤルな歌唱はもちろん、さまざまな個性との競演という色とりどりの宝石を散りばめて輝き続けていることも忘れたくない。

▼『Jewels In The Crown : All-Star Duets With The Queen』に登場するアーティストの作品を一部紹介。

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