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第301回 ─ SEEDA

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/02/21   19:00
更新
2008/02/21   19:47
ソース
『bounce』 295号(2008/1/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

驚異的なペースで傑作を生み出し続けるSEEDAが、早くも6枚目のアルバムをリリースする。2008年の幕開けを飾るマイク・ストーリーは、またしても瑞々しい輝きと新たな希望に満ち溢れているぞ!!


  クラシックの『花と雨』が一昨年の12月、初のメジャー流通作となった『街風』が昨年10月、そして年明けに登場するこのニュー・アルバム……と、リリース年だけを見れば普通にコンスタントなペースのようにも思えるが、よく考えると14か月の間に3枚もアルバムを発表したことになるし、しかも合間には〈CONCRETE GREEN〉シリーズのリリースや客演も展開していたわけだから、まったくもって普通じゃない、というか創作意欲が漲ってきてしょうがない状態なのだろう。今回の『HEAVEN』は、『街風』からふたたび自主制作となったが、環境の変化を何らの問題と捉えさせないほどの表現者としての充実ぶりは、『花と雨』の立役者たるBACH LOGICと盟友のI-DeAがほぼ半々ずつのトラックを提供したシンプルな仕上がりからもビシビシ伝わってくる。

   一聴した感触は『花と雨』に近い印象で、地に足の着いたリリシズムがシンプルなビートの味わいを得て健気に咲いたような、美しい格好良さに溢れている。ただ、リリックにうっすらと漂うリラックス感と抜きを弁えたフロウは、主役の明確な深化を伝えてくれるものだ。ハスリングの経歴からイメージを規定されてしまうような現況に対して一線を引こうとする意識はいくつかの曲からも明確に窺える。SCARS時代の盟友=A-THUGと荒々しく絡む“自由の詩”もポジティヴに響くし、2パック“So Many Tears”を思わせるハーモニカ使いのトラックが心地良いストーリーものの“Son gotta see tomorrow”などにおける淡々とした視点も、以前とは違う意味で実に瑞々しい。そして、LUNAの素晴らしいヴォーカルを翼に替えて目線を上げていく“空”の展開に昂揚しない人はいないだろう。アコギをループしてチルった“Nyce Dream”から“Mary Mary”へと至る終盤のメランコリックな風情にはうっかり涙が出てしまう……こういう作品をヘヴンリーと呼ぶんじゃないのか? 眩しい。なお、随所でORITOが聴かせる酔いどれ天使のようなコーラスも、この世界観の構築に寄与していることを付け加えておこう。

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