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第42回 ─ ノイズが放つ最終兵器デビュー!? 世武裕子×佐藤征史対談

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Go! Go! NOISE McCARTNEY RECORDS
公開
2008/11/13   19:00
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文/bounce.com編集部

くるり主宰レーベル〈NOISE McCARTNEY RECORDS〉の業務日誌連載。今回は、タワーレコード限定販売のアルバム『おうちはどこ?』で11月19日にデビューする〈ノイズのリーサル・ウェポン〉こと世武裕子と、ノイズ社長のマ・佐藤氏によるスペシャル対談をお届けします!

──では、世武さんと佐藤さんの出会いの経緯から伺えますか。

佐藤 ノイズでデモ・テープを募集してるんですけど、最近は自分のサイトやMySpaceのアドレスだけを送ってくる人が多いんですよ。若干手抜きというか、資源を使ってないからエコというか(笑)。彼女もMySpaceのページを送ってきてくれたんですけど、サイトに上がっていた曲を聴いてみたら「なんじゃこれは!?」と。そしたら岸田(繁)から電話がかかってきまして、「あれ聴いた?」「うん、聴いた」みたいな感じで騒ぎになったんです。なんでノイズを知ってたんですか?

世武 とにかくレコード会社を探してたので、〈くるりがやってるレーベル〉ということで連絡してみたんです。でも、日本語で歌った曲とかではないし、音楽ジャンル的に(ノイズからのリリースは)たぶん無理だろうと思ってたんですよ。「こんなの送ってこられても……」って思われるだろうなあと(笑)。私は『ワルツを踊れ』がきっかけで、くるりがすごい好きになって、そこから遡っていままでの作品も好きになったんです。だからくるりがクラシック好きとか、いろんな音楽に興味を持っていることもわかってへんかって。

佐藤 じゃあ、ノイズのこともあまり知らないまま、好きな人たちのやってるレーベルやからってことで?

世武 そうです。自分の好きな音楽をやってる人に送ってみて損はないから。「当たって砕けろ!」と思って、ダメ元で送ってみたら返事がもらえたんです。

──佐藤さんが世武さんの音源を聴いたときの驚きというのは、具体的にはどんなものだったのでしょうか?

佐藤 なんというか、めちゃめちゃ自然な音楽やと思ったんですよね。例えば、朝起きて、雨が降りそうな天気だから若干テンションが下がって、「洗濯物が干せへんなあ」と思ってると、雨が降ってきて……みたいな、なんでもない情景を、どストレートに音楽に表現できている。当人はすごく自然なことをやってるだけなのかもしれないけど、そんなことができる人ってなかなかいないと思うんです。しかも、それをやってるのが日本人の女の子なんやっていう衝撃もでかかった。

世武 ……褒められ過ぎですね。いまの言葉で3日くらいは生きていけます(笑)。

──世武さん自身、日常のなかから音楽を作っていくような感覚はありますか。

世武 小さい頃からクラシックを習っていたんですけど、教科書に書いてるものをそのまま弾くのが好きじゃなかったんですよ。教科書通りの音よりも、こう鳴らした方が好き、みたいになってきて。そうしていくうちに、自分で曲を作った方が楽しいなと思うようになったんです。何かのために作らんとあかん状況っていうのは全然好きじゃないんですけど、自分でフッと思いついたときに作曲するのは好きですね。

──やはり、クラシックを中心に音楽と接してこられたんでしょうか?

世武 そうですねぇ。色んな音楽が好きですけど、一番を選ぶとしたら民族音楽なんです。高校の時に師事していた先生にアイルランド音楽を聴かせてもらったら、すごい衝撃的だったんですよ。それで、高校1年~2年の頃はアイルランド音楽ばっかり作ってましたね。アイルランドにしてもそうですけど、民族音楽って、その癖とかがわかれば、ある程度は雰囲気で作れるようになるし、楽しいんですよ。でも、私には私のアイデンティティーがあるし、それじゃあかんなと思い出したんです。あくまでそういうのは素材の1つであると気づきました。それで「自分の音楽は何か?」って考え出したんです。

佐藤 偉いなあ。ぼくらなんて、海外で1週間暮らしたら、そこの人間になった気分になるのに(笑)。それでフランスに渡って勉強することになったの?

世武 そうですね。ゴダールやトリュフォーとかのフランス映画が好きやったし、フランスで映画音楽作曲家のコースがある学校に入ったんです。そこまでフランスにこだわりがあったわけではないんですけど、アメリカとかよりは身の丈に合ってる感じもしたし。でも、勉強していくなかで「私って音楽がなかったら何もないやん」って思い始めちゃって。小さい頃から音楽だけやってきたから、他人から見た私の印象って音楽だけやったりするんですよ。例えば、学校の文集でも、私に対するコメントがほとんどピアノのことだけだったり。そういうことから自分の音楽が邪魔な気がして、演劇学校に入学して演技を始めたんです。そしたらそれはそれで面白かった。

佐藤 ……ごめん、いろいろあり過ぎて、なんて言ったらいいかわからないわ(笑)。

世武 今回、ノイズの方々と知り合ったら、音楽が好きなスタッフばかりで。「音楽やってることって、めっちゃカッコいいやん!」って素直に思えるようになったんですよ。むしろ、変なところで迷って作ってる音楽なんてどうなんかなあって。それでここ最近、違う意識で音楽に集中することが出来るようになりました。そういう意味でも、本当にいい出会いができたなあと感謝してるんです。CDが出せたから嬉しいってだけじゃなくて。

佐藤 フランスに行ってたのは?

世武 二十歳になる少し前から4年間くらいですね。

佐藤 じゃあ日本に帰ってきて1年半くらい? そりゃあ、くるりも知らないよね(笑)。

世武 向こうでは邦楽を全然聴かなかったんですよ。戻ってきたら、知らないアーティストがすごい増えてました(笑)。

佐藤 どっちかといえばフランスの方がホーム・グラウンドって感覚はまだある?

世武 フランスに行く前は実家に住んでいたし、ピアノの練習ばっかりしてたから自由な感じがなかったんですよ。でも、フランスでは生活すべてを自分でやらなきゃ駄目だったので、向こうの感覚に根本から染まる具合が大きかったかもしれないです。

佐藤 なるほどね。自立した土地だし、そこで自分の生活と音楽が初めて結びついたからホーム感があるんだ。

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