デトロイトの黒い炎、ウェストバウンドが設立から40周年を迎えたぞ!
デトロイト北部を横断する8マイル。エミネムの半自伝映画のタイトルにもなったその大通りを車で〈西に向かって〉いた時に名前が浮かんだという個性派ソウル・レーベル、ウェストバウンドが創立40周年を迎えた。創設者はアルメン・ボルアディアン。地元でディストリビューターをしていた彼は、ジャズやロックも盛んなデトロイトらしい自由度の高いレーベルの設立を思いつく。68年の発足後はエマニュエル・ラスキーのディープなソウル曲が地元でヒットするが、運命を変えたのはジョージ・クリントンの訪問だった。パーラメンツとして在籍していたレヴィロットとの金銭トラブルでグループ名の使用権を失ったクリントンがファンカデリック名義での録音を持ちかけ、そこで“I'll Bet You”を出したところ全米でヒットを記録。レーベルも波に乗りはじめたのだ。
こうしてファンカのようにミュージシャンを自由奔放に振る舞わせた結果、サイケでグルーヴィーなサウンドがレーベルのカラーとなり、(ジュニーを含む)オハイオ・プレイヤーズやファンタスティック・フォーといった中西部の実力派を輩出しながら、デニス・ラサールのハイ録音作なども出していく。72年に新設したジャズ系のイーストバウンドからはメルヴィン・スパークスやシーザー・フレイジャーらも送り出し、後のレア・グルーヴ・ブームにも一役買った。
アトランティックに配給を委ねるようになった70年代後半にはデニス・コフィやマイク・セオドア、キング・エリソンらが裏方としても腕を振るい、ディスコ時代にも対応している。だが、オーナーのアルメンはディスコへの傾倒を嫌い、80年代に入ると作品をゴスペルに絞っていくようになった。そのうちのひとつであるクラーク・シスターズ“You Brought The Sunshine(Into My Life)”が後にラリー・レヴァンの愛用曲となるのはおかしいけれど、そこで言えるのは、ウェストバウンドの作品は最後まで人の心を動かすソウルを失っていなかったということだ。創立から40年──デトロイトの無骨さを70年代らしい洗練で受け止め、地元のシーンを熱くした名門を、モータウンの50周年と同時に祝したい。