ミシェル・ゴンドリーの夢とロマンとユーモアがいっぱい!

自分の好みでいけば、フランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」、ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」、それからローマン・コッポラの「CQ」なんかがそう。クラシックではジーン・ケリーの「雨に唄えば」やフェデリコ・フェリーニの「8 1/2」がそうだし、最近ではベン・スティラーの「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」がそうだった。映画についての映画、いわゆる〈メタ映画〉には素晴らしい作品が多いけれど、ミシェル・ゴンドリーの最新作「僕らのミライへ逆回転」は、それらのなかでもとびきりの傑作として語り継がれていくことになると思う。
物語の舞台は、ニュージャージーにある昔ながらのレンタル・ビデオ店〈Be Kind Rewind〉。店長から店の留守を任された従業員のマイク(モス・デフ)は大張り切りで仕事に励むが、高圧電線に触れて身体に強い磁気を帯びた近所の悪友ジェリー(ジャック・ブラック)に、店内にあるすべてのビデオを消去されてしまう。困ったふたりは、苦肉の策として消えてしまった映画を自分たちでリメイクするというとんでもないアイデアを思いつき、実行に移していくのだが……というお話。このデタラメなプロットを思いついた時点で、映画の成功はほとんど約束されたようなものだろう。
劇中でリメイクされる映画は、「ゴーストバスターズ」「ラッシュアワー2」「ライオン・キング」「ロボコップ」「ボーイズ・ン・ザ・フッド」「シェルブールの雨傘」などなど。ローテクでアナログで、でもとってもキュートな〈パチモン映画〉の数々は、ホワイト・ストライプス“Fell In Love With A Girl”のレゴ・アニメから「恋愛睡眠のすすめ」のダンボール・アートまで、手作り感溢れる温かい映像で人気を博してきたゴンドリーの真骨頂だ。そういった意味では、これは彼のフィルモグラフィーの集大成といえるような作品になるのかもしれないが、まさかそこに「ブロック・パーティー」のエッセンスまで入ってくることになろうとは! マイクとジェリーの(劇中で言うところの)スウェード版映画はやがて街全体を巻き込む騒動へと発展して、最後にはなんの変哲もないニュージャージーのダウンタウンにささやかな奇跡が舞い降りる。
映画のクライマックス、スクリーンのぼんやりとした光に照らされた街の人々の笑顔を見ていると、なんだかもうそれだけで胸がいっぱいになってくる。〈映画についての映画〉に傑作が多いのはなぜなのか。そして、そもそも映画を観るっていうのはどういうことなのか。ゴンドリーは、そのひとつの答えをここで見事に提示している。
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