
2008年4月から続く、70年代フュージョン復刻プロジェクトの第3弾。フュージョン・ライターの第一人者熊谷美広氏、アドリブ編集長松下佳男氏の監修に加え、アドリブとタワーレコードのコラボによる同シリーズの今回のラインナップは厳選7タイトル。〈グルーヴ・マスター編〉と題されたアイテムはそれぞれ特色のあるグルーヴ・フィーリングに満ちたもので、思わず体がゆれてしまいそうな、そんなサウンドに満ち溢れている。2タイトル(アルフォンソ・ジョンソン、ロドニー・フランクリン『ロドニー・フランクリン』)を除く5タイトルが世界初CD化となり、これでフュージョン市場活性化にまたまた貢献というのもうれしい話だ。アーティスト的にも70年代終わりから80年代初頭にかけての象徴的な名前が多く、いわゆる〈裏クリスタル〉な時代の産物としてのラインナップといえるだろう。
ウェザー・リポートの元ベーシスト、アルフォンソ・ジョンソンの『スペルバウンド』ではキャメルにも通じる、まるでブリティッシュ・プログレのようなジャズ・ロックなプレイに酔いしれる。女性フルート奏者ボビー・ハンフリーの『テイラー・メイド』はソウルフルでジャジーなフレージングが心を乱し、レア・グルーヴ曲《ラヴ・トゥ・ラヴァー》が光る。エムトゥーメイの『キス・ディス・ワールド・グッドバイ』はレジー・ルーカスとのコラボ時代の最初の一作で、ちょっとP-ファンクなノリと作曲者自作自演のR&B名曲《クローサー・アイ・ゲット・ユー》を収録しており、女性シンガーのタワサ・エイジーの素晴らしさを〈再発見〉する。ロドニー・フランクリンの2作『ロドニー・フランクリン』『エンドレス・フライト』は今回のアルバム群の中では新しい録音の80年代初期のアルバムだが、美メロも堪能させるジャジーなピアノがグルーヴ・ビート、ストリングス・サウンドとともに響きわたり、『ロドニー~』には参加ミュージシャンにジェフ・ポーカロの名前も。ロニー・フォスターの『デライト』は多彩なキーボード・ワークに加え、《ユー・アー・ザ・ワン》といったヴォーカル入りのAORナンバーが必聴で、スティーヴィ・ワンダーやジョージ・ベンソンのゲスト参加もあり。そしてパーカッション奏者のウィリー・ボボの『ボボ』はこの時代のAOR、フュージョンの要素が全開で捨て曲なしのメロウ・グルーヴ・ナンバーだらけで一曲目の《Polos》のカッティング・ギターのイントロから一発でハマること間違いなし。
今回の復刻で感じたことは、もう出尽くした感のあるフュージョン・アルバムのリイシューも「まだまだあるな」ということ。そして今の音楽シーンにも十分通じる、時代を先取りしたメロディやサウンド・メイキングの完成度の高さ、音楽そのものの発想のユニークさをあらためて実感。第4弾はどんなタイトルが飛び出すか、非常に楽しみだ。