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凄まじいライヴ量でUSバンド級の力強さを手にしたブラッド・レッド・シューズ

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2010/02/10   18:10
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文/久保憲司

 

ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、凄まじい数のライヴでUSバンド級のストロングなサウンドを手に入れた男女デュオ、ブラッド・レッド・シューズについて。

 

彼らのホームページのアー写やこのアルバム『Fire Like This』からのシングル“Light It Up”のPVを見てると、ヴォーカル/ギターのローラ・メアリー・カーター、大人の女性って感じになっていてカッコ良いですよね。ヒョウ柄のコートに黒いアイメイク、そして、ボロボロの白いストラトがマーク・ボランのようにきまっています。ローラ嬢、テレキャスからストラトに変えたのでしょうか? ぼくはストラトのほうが似合っていると思いますが、みなさんどうでしょうか。そして、ローラとほとんど同じような音域で歌える羨ましい声帯を持ったヴォーカル/ドラムのスティーヴン・アンセルは、ルックスはいままで通りで金髪に革ジャンなんですけど、目つきが鋭くなっていますよね。ぼくが気付いてなかっただけなのかな。いや、そんなことないです。

2月15日の東京・代官山UNITでの一夜限りのライヴが楽しみです。このアルバムに入っている曲はもう1年くらいやり続け、時には歌詞のない状態でもお客の反応を見るためにやっていたみたいで、きっとUNITでもこのアルバムのように、完璧なライヴを見せてくれるでしょう。しかし、このアルバム、ルックス以上に大人になったというか、よりタイトにハードになっていますよね。いままでのブラッド・レッド・シューズには、ちょっと80年代のゴスのヘタウマなところを変な……おっと失礼、オシャレなアレンジで、しかも二人だけで、カッコ良く……という印象を持っていたのですが、このアルバムを聴くと、昔、友達とソニック・ユースやバットホール・サーファーズなんかを観た後にしていた会話を思い出します。「やっぱアメリカのバンドのほうがハードだよな、やっぱ肉食っている量が違うからな」なんてバカな批評をしていたんですけど、そういう力強さを感じるんです。

 

でも前に、ブラッド・レッド・シューズの二人とライオット・ガールの話になり、ぼくが「ライオット・ガールって、思想だけじゃない? ハギー・ベアってあんまりライヴ良くなかったよね」って言ったら、ローラ嬢がすかさず「確かに。でもビキニ・キルは凄かった」と、UKのライオット・ガールのバンドはヘタクソだったけど、USのライオット・ガールのバンドはヤバかったって言っていた。というわけで、ブラッド・レッド・シューズの二人はアメリカのバンドに負けないようにハードになっていったと……違うか。

 

USのバンドがハードだというのは肉を食っているからじゃなく、やっぱライヴの本数がヨーロッパのバンドと比べると半端じゃないくらい多いからです。ブラッド・レッド・シューズもまさにそんな感じですよね。二人という身軽なスタイルで、凄まじい数のライヴをこなして、日本に来るのもこれで5度目だったりする。偉いよ。ホワイト・ストライプスと同じく、昔のブルースマンのようなスタイルでいろいろな所でライヴをする。ドラムとギターというシンプルなスタイルだけど、誰も勝てない。そして、声質の似た二人の声がブレンドされると、もう完全に敵なしだよね。本当にカッコ良いなと思う。