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いよいよ到来する世界の終わり――その時、ゴリラズはどう戦うのか

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2010/02/24   18:30
更新
2010/03/03   18:09
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文/久保憲司

 

ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、世界の終わりを告げる新作のリリースを控えたヴァーチャル・バンド、ゴリラズについて。

 

ゴリラズの3枚目が発売される。それに合わせてぼくもTwitterを始めたのだが、恥ずかしながら、ぼくは全然違う人をゴリラズと思って、フォローしてしまっていた。むちゃくちゃ、恥ずかしい。その人はぼくにダウンロードをしろと持ちかけるんです。だから、他の人に〈この人が何回もダウンロードしろとひつこく持ちかけるんですけど、どうしたらいいんですか?〉とみんなにつぶやいたら、その人が〈いや、だわっ、私こういうキャラなのよ〉って言うんですよ。それで、〈あっ、これがゴリラズの人なんだ〉と思って、〈すいません、ゴリラズの人ですよね? 変な日本語が可愛いですよ〉ってつぶやいたら、〈ふっふっふっ〉とまたつぶやくのです。〈凄いな、良くできてるな〉と思ってダウンロードしたら、これがなんと日本語の歌で、ゴリラズと全然違うのです。ぼくは〈世界中に失態を曝け出してしまった〉と、世界の中心でつぶやきました。

というわけで、完全に乗り遅れてしまいました。でも、なんか日本の人はシャイみたいで、まだそれほどつぶやいていなく、リーダーのマードックが寂しそうでした。みなさん、つぶやいてみてください。物語に参加するチャンスですよ。まだ、ぼくはやっていないんですけど、なんか楽しそうです。ぼく、日本のマードックの吹き替えやりたかったな、いまから替わってもらえないかな、誰がやっているんだろうな、けっこうよく出来ているな、という感じです。

ゴリラズの全貌がわからない人は、ホームページでもなんでもいいんで、調べてみてください。ぼくは「SNOOZER」の最新号が、いちばんゴリラズの歴史がわかるような気がします。間違っているかもしれませんが、ぼくの視点で書くと、いろいろな問題を抱えた若者がロック・バンドを作り、世界的成功を収める――それが1枚目でした。2枚目では世界的成功を収めたものの、ドラッグに溺れた者や、新興宗教にハマった者などがいて、バラバラになる。しかし、彼らはまた古巣であるコング・スタジオに戻ってきて、2枚目を作る。そして、この最後と言われている3枚目である。しかし、そこにはもう誰もいない。リーダーのマードックだけが世界の終わりに恐怖しながら作ったアルバムである。「SNOOZER」には、まさにそんな彼の心境を描いたかのようなイラストが描かれている。マードックの手にはデヴィッド・ボウイの『Hunky Dory』が――これだけで、このアルバムがどういう作品なのかがわかる。

いま、ぼくが聴ける曲は“Stylo”だけ。トランス状態に入ったかのようなボビー・ウーマックのヴォーカルとモス・デフのラップに2Dの歌、というアーバン・ソウルな曲。ベースラインがブラーぽいのが涙する。さすが、ブラーがグラストンベリーでライヴをしている時にデーモン・アルバーンのスタジオに忍び込み、ブラーの新作のために用意されていたデモを盗んだだけのことがある。他もこういう感じの曲に、ルー・リード、マーク・E・スミス(フォール)、ホラーズ、そして、元クラッシュのミック・ジョーンズ、ポール・シムノンなどが参加していて、豪華なアルバムに仕上がっているような気がする。実現しなかったブラーの新作、2010年のブラーのアルバムといってもいいんじゃないだろうか、さっ、幕はいま開いたばかりです。この物語がどう始まり、終わっていくのかもあなた次第です。きっと、いろんな物語のヒントが隠されているだろうから、ダウンロードよりも、CDを買うほうをおすすめします。この世界の終わりに、彼らがどう戦おうとしているのか、見てみよう――いや、参加してみましょう。