
ショパン・イヤーを飾る待望の新録音!
1990年に録音され、【DG】から発売された、ルイサダによるショパン『マズルカ集』は、全世界に一大センセーションを巻き起こした。それまでは85年のショパン・コンクール5位という肩書きで括られ、当時の日本を席巻したブーニン旋風の陰に隠れていた感もあったルイサダが、その後スポイルされていったブーニンとは逆に、世界の舞台へと躍り出るキッカケとなったこの録音は、今日もなお、アルトゥール・ルービンシュタインや、他ならぬルイサダを一時期教えたことのある、ニキタ・マガロフの遺した名演奏などと並び、『マズルカ集』の決定的な録音の一つとして、確固とした地位を保ち続けている。
そんなルイサダは、その後も舞台形式の実験的な試みをはじめ、さまざまな形でショパンという音楽家と向き合い続け、多数の録音を世に問い続けて来た。生誕200周年のショパン・イヤーである今年、満を持して登場するのが、2008年10月に、日本の軽井沢・大賀ホールで録音された、この『マズルカ集』の最録音である。
収録曲は旧録音とは異なり、ショパンの没後、ワルシャワ時代からの友人だった、ユリアン・フォンタナが編んで作品番号をつけた、遺作のopp.67と68の各4曲、合計8曲が削除されていることだろう。その他の遺作マズルカも収録されていない。つまり、自分が作品番号をつけて出版したもの以外は全て破棄するように、というショパンの遺言をいわば裏切ることで我々の手元に届けられた曲すべてを排除し、ショパンが矜恃を籠めて世に送った、珠玉の作品だけが並んでいる、という次第である。
幼少期を過ごしたポーランドの回想とそこでの師匠たちの言いつけを守り、過去を繰り返し反芻して生きたような、螺旋階段のように旋回しつづけたショパンは、生涯一度も、いわば未来派的な、アヴァンギャルドな志向というものを抱いたことのない、ロマン派の稀有な存在である。そんなショパンにとって、マズルカとは、生涯を通じて営々と作曲を続けた唯一のジャンルである。つまりショパンの精髄と人生は、この『マズルカ集』に凝縮されているといって過言ではない。各々の曲は、驚くべき多彩な輝きを放ち、我々を魅了してやまない。そして、当初は落ち穂拾いのようにまとめられていた曲集は、後期へ向かうにつれ、各曲の繋がりを抜きには考えられない、
〈作品集〉としての体裁を整え始めてゆくのも『マズルカ集』の特徴だ。いわゆる全集録音に興味を示さず、気に入ったものだけを弾くルイサダが、こうも『マズルカ集』にこだわり続けるのには、それだけの理由があるわけだ。
加えて今回の録音は、もちろん通常のCDプレイヤーでも再生可能だが、SACDハイブリッド盤であり、SACD層はマルチ・チャンネル再生にも対応している。一層の深みと自由を体得したルイサダが紡ぎ出す、色とりどりのマズルカをかくも素晴らしい音質で聴ける。もうそれだけで事件である。
『ジャン=マルク・ルイサダ2010年来日公演』
2010/7/11(日)東京・東京芸術劇場 共演:東京都交響楽団
http://www.tmso.or.jp/
7/13(火)東京・浜離宮朝日ホール リサイタル
7/16(金)東京・八王子いちょうホール リサイタル
7/17(土)東京・紀尾井ホール リサイタル
7/22(木)福岡・アクロス福岡 リサイタル
7/23(金)大阪・いずみホール リサイタル
http://www.imc-music.net