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JAY SEAN

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公開
2010/03/26   23:20
更新
2010/03/26   23:28
ソース
bounce 318号 (2010年2月25日発行)
テキスト
文/轟ひろみ

 

いま改めて注目すべき……ジェイ・ショーンとは何か?

 

 

昨年末に登場した輸入盤で一度紹介しているジェイ・ショーンのUSデビュー・アルバム『All Or Nothing』ではありますが、ここに至って日本盤が登場! しかも微妙に内容の異なる本国UK盤とUS盤をイイトコ取りしたような内容だから、全米No.1を見事に奪った“Down”でのリル・ウェインはもちろん、ショーン・ポールやリル・ジョン、そしてクレイグ・デヴィッドとのコラボが一気に楽しめるうえに、独自の未発表新曲まで収録とは……改めて紹介するしかないでしょう。今回は4つの視点からジェイの魅力を再確認していきましょう。

 

▼関連盤を紹介。

左は日本盤がリリースされたばかりの、ジェイ・ショーンのニュー・アルバム『All Or Nothing』(Jayded/Cash Money/ビクター)。UKやUS盤よりも充実の、ボートラも含む全18曲入り! 右はショーン・ポールの2009年作『Imperial Blaze』(VP/Atlantic)

 

ジェイ・ショーンは……キャッシュ・マネー軍団の一員である

 

首領のベイビー(バードマン)と看板スターのリル・ウェインを中心に、テネシーのヨー・ゴッティやフロリダのブリスコ、裏方としての活躍も多いロック・アーティストのケヴィン・ルドルフなど数多くのタレントを抱えるキャッシュ・マネー。最近ではバウ・ワウやフリーウェイらの大物が移籍してきたり、ドレイクらを擁するウェイン主宰のサブ・レーベル=ヤング・マネーの動きも活発だ。そんなスター集団にジェイ・ショーンがいきなり発見されたのは、2作目『My Own Way』の大部分を手掛けたJ・レミー&ボビー・ベースがバードマンに働きかけた結果だそう。そして生まれたのが、ウェインのラップをフィーチャーした超ポップな全米デビュー曲“Down”だったのだ。バードマンは自身の“Written On Her”にもジェイを迎えているし、彼の美声がすっかりお気に入りの模様!

 

▼関連盤を紹介。

左から、バードマンの2009年作『Priceless』(Cash Money/Universal)、リル・ウェインのニュー・アルバム『Rebirth』(Young Money/Cash Money/Universal)

 

ジェイ・ショーンは……エイジアンR&Bの希望である

 

かつてはバングラなど〈インド系らしいこと〉を求められて悩んだこともあるというジェイだが、ニーヨの登場を経てR&Bに求められる濃さの度合いが変化したことで状況も大きく変化。それと時を同じくして世界各地のアジア系R&Bシンガーがポスト・ニーヨ的な作風で注目を集めている。ついに本国でメジャー契約に漕ぎ着けた中国系英国人のスティーヴィー・ホアン、フィリピン系オーストラリア人のイスラエル、韓国系アメリカ人のジニュ・パーク、故郷マレーシアで活躍中のリアンなどが、滑らかな美声と美メロで日本でも先物買い的に話題になった。が、いずれも本国ではまだ大舞台に辿り着いていないわけで、その点でもジェイの成功は大きな励みになっているはずだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、スティーヴィー・ホアンの2009年作『All Night Long』(avex trax)、ジニュ・パークの2008年作『The Launch』(Jinu Park)、リアンのニュー・アルバム『Rigga. Dang. Digga. Digga』(4our 4ourty/インパートメント)

 

ジェイ・ショーンは……UKアーバンの急先鋒である

 

このたび念願の共演も実現させているクレイグ・デヴィッドは、全米進出を果たしたUKアーバンの先達として、これまでジェイ・ショーンが目標にしてきた存在だという。先だって全米初登場1位を獲得したシャーデーのような別格アクトはさておき、UKのアーバン系シンガーやラッパーがUSでも同じように受け入れられる例は、まだまだエステルやレオナ・ルイス、ポップ寄りのものを含めてもベディングフィールド兄妹など数えるほどしかない。が、全英チャート内に〈UK R&B〉部門が新設されたことからもわかるように、ここ数年でUK産のR&Bはいよいよ層を厚くしている。レマーのように往年のUKソウル感を備えた人から、エレクトロ人気に乗ってシングル・ヒットを連発するタイオ・クルーズ、オーディション番組出身のJLSなど、スタイルも方向性もさまざまながら、ひと頃より大西洋は狭くなっているようだ。ジェイ・ショーンの成功はその象徴だという言い方もできるかもしれない。

 

▼関連盤を紹介。

左から、クレイグ・デヴィッドのベスト盤『Greatest Hits』(Warner UK)、レマーの2008年作『The Reason』(Sony UK)、タイオ・クルーズの2009年作『Rokstarr』(Island)

 

ジェイ・ショーンは……ジェイ・ショーンである

 

ジェイ・ショーンはロンドン生まれのインド系イギリス人だ。マイケル・ジャクソンやスヌープ・ドッグに憧れて歌やラップを始めたものの、UKエイジアンのコミュニティーから現れたことでR&Bシンガーのイメージを持たれにくく、音楽性をストレートに認められなかった時期もあるそうだ。同じUKエイジアンのリシ・リッチに発掘された彼はすぐにメジャー・デビュー。2004年にスターゲイトも関わった初のアルバム『Me Against Myself』を発表しているが、これは現在のジェイとは少し雰囲気の異なる東洋テイストを強調した作りだった。結果的に〈ジャンル替え〉を提案してきたレーベルを離れ、自主レーベルのジェイデッドから放ったのが全英6位の大ヒットになった2作目『My Own Way』というわけである。こうした経緯があるからこそ、この先どこから何を出そうが、ジェイはジェイであり続けていくことだろう。

 

▼ジェイ・ショーンの作品を紹介。

左から、2004年作『Me Against Myself』(Relentless/Virgin)、2008年作『My Own Way』、2009年作『My Own Way: Deluxe Edition』(共に2Point9/Jayded)

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