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第44回――ビル・ウィザーズ

ESSENTIALS フォーキー・ソウルの定盤たち――(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/04/28   21:00
更新
2010/04/28   21:17
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

 

THE ISLEY BROTHERS『Givin' It Back』 T-Neck/Buddah(1971)

現在は2in1で入手可能。ジャケでギターを抱えているのはこの時期によく見られた〈演出〉で、ニュー・ソウルと白人シンガー・ソングライターが共鳴し合っていた時代の雰囲気を明白に示すものだ。実際にここでもスティーヴン・スティルスやジェイムズ・テイラーらの著名曲を取り上げることでフォーキーな風情を纏っている。本人をギターに迎えたビル・ウィザーズのカヴァー“Cold Bologna”もアリ。*出嶌

JOSE FELICIANO『And The Feeling's Good』 RCA/ソニー(1974)

プエルトリコで生まれ、NYで育った盲目のギタリスト/シンガー。ラテン系アーティストだが、客演したビル・ウィザーズ『+'Justments』と同年に発表された本作での(フォーキー・)ソウルマンぶりは特別だろう。スティーヴィー・ワンダー“Golden Lady”のグルーヴィーなカヴァーなど、指使いが目に浮かんできそうなガット・ギターの鮮やかな音色とホセの情熱的な歌が聴く者の気分を昂揚させる。*林

JOAN ARMATRADING『Joan Armatrading』 A&M(1976)

アコースティック・ギターを抱えて歌うフォーキーな黒人女性シンガーといえば、西インド諸島生まれ/英国育ちのこのジョン・アーマトレーディングを思い浮かべる人も多いだろう。A&Mからの第1弾アルバムとなる本作には、代表曲の“Love And Affection”や“Down To Zero”など、アコギを手にしたジャケのイメージ通りのフォーキーなナンバーが並ぶ。〈フォーキー・ジャズ〉と呼んだほうがしっくりくるか。*林

LABI SIFFRE『Crying Laughing Loving Lying』 Pye/EMI(1972)

〈UK版テリー・キャリアー〉と言われるこの人も、アコースティック・ギターを抱えてフォーキーなソウルを歌うシンガー・ソングライターだ。ニルソンみたいなノスタルジックで切ない雰囲気を醸し出しながらホセ・フェリシアーノに通じる情熱的なテナー・ヴォイスで歌うスタイルは、この3作目でも変わらず。ピアノ伴奏によるバラード“My Song”はカニエ・ウェスト“I Wonder”のネタ元として有名。*林

LINDA LEWIS『Lark』 Reprise(1972)

瑞々しいアコースティック・ギターとキュートな歌声で聴く者に多幸感をもたらしたフォーキー・ソウルの妖精。特に名盤の誉れ高いこのセカンド・アルバムは、リンダがアコギでストロークを刻む“Spring Song”を筆頭に、フォーキーにグルーヴするナンバーが揃う。ベースレスな曲もあって、そこらへんはビル・ウィザーズの『Just As I Am』に通じるかもしれない。シンプルなのに雄弁なのは自分の言葉を持っているからこそ。*林

LOU BOND『Lou Bond』 We Produce/Light In The Attic/OCTAVE(1974)

スタックスの傘下ブランドから登場したシンガー・ソングライターの唯一のアルバム。アイザック・ヘイズ軍団がバックを固め、EW&F加入直前のアル・マッケイも参加。長尺のスピリチュアル曲“To The Establishment”に後世の人気は集中気味だが、本人の志向はビル・ウィザーズ“Let Me In Your Life”のカヴァーに代表される簡素なフォーキー路線だろう。ファルセットとオヤジ声を行き交う素朴な歌が快い。*出嶌

TERRY CALLIER『What Color Is Love』  Cadet/Geffen(1973)

フォークとジャズをミックスしたシカゴの吟遊詩人。チェス傘下のカデットから発表した70年代初頭の3作は、いずれも彼の爪弾くアコースティック・ギターと淡々と綴るような歌声が静かに深く体内に染み込んでくる名盤で、その2枚目にあたる本作は、まさにフォーキーな表題曲など、チャールズ・ステップニーによる美しいアレンジの光る名曲が揃う。デルズが取り上げた“You Don't Care”のインスト版も収録。*林

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