世界を旅するアフリカ音楽の魂を聴け!
言わずと知れたセネガルのスーパースターによる作品が同タイミングで2枚登場した。まずは2年に渡って彼の活動を追ったドキュメンタリー映画「I Bring What I Love」のサントラ。初期の名曲“Imimigres”からイスラム色を強く出した“Touba-Daru Salaam”など2000年代以降のナンバーまで、長いキャリアのなかで生まれた代表曲をライヴ録音も含む現在のアレンジで一気に俯瞰できる内容になっている。
またもう一方のオリジナル・アルバムとなる『Dakar-Kingston』は新機軸のレゲエ作品に。故ボブ・マーリーのホーム・スタジオ=タフ・ゴングで録音が敢行され、これが片手間でレゲエに手を出したものではなく、元ウェイラーズのアール“チナ”スミスらジャマイカの腕利きを集め、プロデューサーにタイロン・ダウニーを迎える気合いの入れよう。バネの効いたレゲエ・フォームにトーキング・ドラムなどアフリカ楽器の音色を薄く塗した演奏が素晴らしく、ユッスーの歌声も水を得た魚のように活き活きと響いている。特に印象的なのはボブのさまざまな歌詞を引用した“Marley”。2人の偉大な音楽家の魂が時代を超えて呼応したような感覚を覚える、実に感動的な一曲だ。国境や文化を軽やかに飛び越えるスケールの大きい活動からは、まだまだ目が離せそうにない。
▼文中に登場した作品を紹介。
左から、サントラ『I Bring What I Love』(Nonesuch)、ユッスー・ンドゥールのニュー・アルバム『Dakar-Kingston』(Nonesuch)