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第11回――朝の犬

連載
KOHOLO
公開
2010/06/23   17:53
更新
2010/06/23   17:53
ソース
bounce 321号 (2010年5月25日発行)
テキスト
詩・アートワーク/青柳拓次

 

KOHOLO321

赤子が一日のうち

もっとも機嫌の良い時間 朝

 

大家の雨戸が 

つかわれなくなった倉庫のように 

閉じられている

家の敷地には 

休みや正月にやってくる

赤いドイツ製の車が 

うずくまっている

 

あんなに元気だったのにね

ずいぶん急ですね

いついってもおかしくないの

そろそろらしいね 

お婆ちゃんも可哀想に

 

大家のお爺さんは

朝になると 夫婦で公園に体操にでかけ

かえってくると ふたりで庭仕事

 

かんがえてもみない展開がふってくると しっていながら

だれしも それに翻弄されるのが ほんとう

 

お爺さんが

うちの犬のために建ててくれた犬小屋

犬は気に入らず

いちども犬小屋でねることはなかった

 

朝の犬 

大きなおとをたてて 

バケツのごはんを食む

 

バケツのなかの朝ごはんをたべて

生きる 犬の人生

 

ともに ほんとうの人生を 生きている 犬

 

PROFILE/青柳拓次

サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアート・アーティスト。LITTLE CREATURESやKAMA AINA、TAKU & GOROで活動。LITTLE CREATURESのライヴDVD「NIGHT PEOPLE REVIEW」(CHORDIARY)も好評リリース中。現在7月発表予定のソロ・アルバムを絶賛制作中! 最新情報は、〈tone.jp/artists/aoyagitakuji/〉へ!