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産地直送! 〈WIRE10〉ガサ入れ報告(ダダ書きver.)!

連載
Y・ISHIDAのテクノ警察
公開
2010/09/01   18:00
テキスト
文/石田靖博

 

長年バイイングに携わってきたタワースタッフが、テクノについて書き尽くす連載……の番外編!!

 

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Photo by 北岡一浩

 

8月最終週の土曜と言えば? そう! 「24時間テレビ」……じゃなくて日本テクノの祭典=WIREですよ! ということで、2010年8月28日、〈WIRE10〉に潜入しましたよ! なんと今年は18時から翌朝8時までの14時間! ヘタレの筆者は遅れて20時過ぎに横浜アリーナに突入(モニカさんスマぬ……)!

 

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HARD TON Photo by 北岡一浩

 

〈MAIN FLOOR〉に入ればいきなり今年の裏目玉、ハード・トン! 〈ディヴァインの再来〉との呼び声は伊達ではないアレなルックス(ハゲ・デブ・ヒゲ・Tバック・ボンレスハム的~ヒモ巻き的衣装!)、転じてカストラート的な伸びやかな美声、303ビキビキな正統派アシッド・テクノ、確実にトラウマ必至な強烈ぶり! マドンナ“Music”のカヴァーもバッチリ!

 

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ALEX BAU Photo by 成瀬正規

 

そのまま〈SECOND FLOOR〉へ駆け上がり、アレックス・バウ! ヘッドフォンがヘアバンドのようになっていて北欧テニス選手のようなバウ、いま人気の硬質テック・ミニマル! 〈SECOND〉のVJを担当する〈ミスター・ドミューーーン〉こと宇川直弘の映像も快調にどうかしてる!

 

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ELLEN ALLIEN Photo by 北岡一浩

 

21時を過ぎ(まだ1時間……)、愛しのエレン・アリエンさんのプレイする〈MAIN〉に戻る。派手ではないが、最新チューンを中心に、的確なミックスでしなやかな感性で紡いでいくエレンさんのプレイこそ実はいまのテクノが見えるのであって……という御託よりも、あのクールな美貌で、当て振りのような踊りをするエレンさん、超カワイイ! 筆者が最前列かぶり付きで見上げる様は、同時刻に日本武道館で「24時間テレビ」のAKB48を凝視するファンと寸分も変わらないものだったろう。

 

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上から時計回りにERIC SNEO、HELL、DOMINIK EULBERG Photo by 北岡一浩(ERIC、HELL)、成瀬正規(DOMINIK)

 

その後、〈SECOND〉のドミニク・オイルバーグ、〈MAIN〉のDJ地獄ことヘル伯爵のプレイをチョイ見して、そのままエリック・スネオのライヴ。これがスゴくて、ベーシックなトラックの上でスネオ自身がディジュリドゥやパーカッションを演奏するという、イヤでも盛り上がらざるを得ないハード・テクノ・ショウ!

 

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石野卓球 Photo by 北岡一浩

 

そして日を跨いだ24時過ぎ、遂に登場したのは〈WIRE〉の顔、石野卓球! ここでレーザー、照明、映像も一気に豪華になり、〈MAIN〉に大移動してきた観衆も大盛り上がり! そして序盤にハイライトが! そう、今年5月25日に急逝したKAGAMIの代表曲“tokyo disco music all night long”をプレイ! KAGAMI本人によるヴォコーダー・ヴォイスでの〈tokyo disco music ~〉のフレーズが出た瞬間、横アリのフロア全体が狂喜といくばくかの感傷に包まれたような感情が爆発。間違いなくこの夜のピークの1つであった。この時、フロア上方に設置されたモニターに映し出された〈WIREガール〉(勝手に命名)がKAGAMIのネームボードを持っているという心憎い演出もお涙頂戴にはならない。そこがテクノらしくて良かったと思う。その後の卓球のプレイは、新作『CRUISE』からの曲も交えたりしたものの、ラストまで真っ当なテクノを真っ当にプレイするというものだった。毎年〈WIRE〉での卓球のプレイを聴くと思うのが、自分がオーガナイズする巨大レイヴにも関わらず、プレイ自体は変な気負いや特別感もなく、ただ単にある一夜のプレイ、という感じなのだ。そこが日常に根付いた感じで良い。

 

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ケンイシイ Photo by 北岡一浩

 

そして〈MAIN〉は卓球と共に日本テクノを牽引してきたケンイシイ。登場当初の線の細い知的なテクノ、というイメージで見ている人がいたら、ぜひ彼のDJを体験すべき。今年もガンガン盛り上げる骨太なプレイでフロアを炎上させていた。そのなかにクラフトワークとかを混ぜちゃうのがテクノ・ゴッドたる所以。

 

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上から時計回りにROMAN FLUGEL、DUSTY KID、BUTCH Photo by 北岡一浩(DUSTY、BUTCH)、成瀬正規(ROMAN)

 

ここで〈SECOND〉に移動、ブッチ(ちょっとニコラス・ケイジ似)の硬めテクノ&宇川先生の基地外VJを浴び、フードフロアの動向をチェックしつつ(今年のブームはやはり食べるラー油使い! 筆者の2009年のMVPだった肉巻きおにぎりは早くも売り切れ!)、〈MAIN〉のローマン・フリューゲル(オルター・イーゴ)へ。ガリ勉始めて20年的なルックス、そしてクリッキーな感触ながら凝った展開の最新テクノをプレイするローマンは、ボクら(誰だ)の味方です。しかしこの時点で3時過ぎ。スタートから9時間、筆者が入ってからですら7時間経過。流石に〈WIREっ子〉たちの体力も底を尽きかけ、外のロビーや3階のギャラリーシートは野戦病院状態、フロアのテンションも正直降下気味。そこに気合いを注入したのがダスティ・キッドのライヴ。腹の底にズシンとくる極太ビートはダレン・エマーソン在籍時のアンダーワールドのよう(しかし、筆者はこのとき幽体離脱)。

 

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RADIO SLAVE Photo by 北岡一浩

 

ここらで復活の兆しありの〈WIREっ子〉にさらなる気合いを注入したのが現在最強のテクノ人、レディオ・スレイヴ! 〈WIRE〉自体3年連続出演、それ以外にも結構来日していて、もうラジオ奴隷節にも慣れたかな……と思いきや、いやいやラジオ奴隷はスゴかった! あの深淵なる音空間が〈WIRE〉のサウンドシステムで爆音で鳴らされるだけでエクスタシー! 個人的にはカール・クレイグの大名曲“Atles”のクリスチャン・スミス・リミックスで昇天3回!

 

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JEFF MILLS Photo by 北岡一浩

 

そしてオーラス、ジェフ・ミルズ(とはいえ5時半過ぎという、普通なら終わってる時間)! 通常のDJブースではなく、ライヴ・ステージの後方に3面スクリーンを設置し、その前に設置されたDJブースに黒装束のジェフが登場。そして右スクリーンには赤装束のジェフ、左スクリーンには白装束のジェフが映し出され、3人のジェフがDJプレイをするという様にフロアのテンションは急上昇! 音はここ最近のスペイシー・デトロイト路線でフロアは一気にジェフ宇宙に。

 

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JEFF MILLS & BLUE MAN GROUP Photo by 北岡一浩

 

そして今回の目玉の1つ、ジェフとブルー・マン・グループとの共演! 結局、ジェフの途中でブルー・マンがいつものネタをやる感じで、おもしろかったけど必然性は感じなかった。けど会場は大盛り上がりだったし(この夜、唯一規制がかかった)、結果的には良かったのだろう。

 

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FUMIYA TANAKA Photo by 成瀬正規

 

その頃〈SECOND〉では守護神、フミヤ兄さんがいつも通りに男気全開、激シブ&カッコ良いミニマルをプレイ。たまに身体を激しく回転する踊り(なのか)で気合いを見せる(今回は卓球とTASAKA、ジェフとフミヤのように同じ系統がカブるタイムテーブルにちょっと困った)。

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JEFF MILLS Photo by 北岡一浩

フミヤ兄さん、アンコールに応えて〈SECOND〉が終了したのが7時半。〈MAIN〉に戻ってみたら、ジェフもちょうど終了。ちょっとガックリしていたら、アンコールに突入。いや、これがスゴすぎ! 何せいきなり大名曲“Bells”でスタート! そして名作『Waveform Transmission』、トライバル・ミニマルのルーツとなった超傑作“The Purpose Maker”、そしてここ最近プレイしていなかった初期の神曲“Changes Of Life”までプレイする、〈オレたちが聴きたかったジェフ〉的なプレイに会場大爆発!

8時に会場の明かりとモニターに〈SEE YOU NEXT YEAR〉の文字が出て大団円。今年も〈WIRE〉に参加して思ったのは、良い意味で〈特別なイヴェント〉感がなくなったこと。これはテクノが日常に根付いた1つの成果だと思う。次に、〈こんなカワイイ(or エロい)娘もテクノ好きなのか……?〉というぐらいの女子がたくさんいたこと。昔のテクノ・イヴェントにはあんなんいませんでしたよ! そして今年の〈WIREガール〉は、評判だった2006年のチアガール以来の当たりであった、ということだろう。

てな感じで筆者の見たままを時系列に並べたこのレポを読んで、いかに筆者が盛り上がったのかということと、〈WIRE〉とテクノのおもしろさ、素晴らしさを少しでも感じてもらい、来年の〈WIRE〉に足を運ぼうと思ってもらえたら幸いです。以上、ガサ入れ報告終了!

 

 

PROFILE/石田靖博

クラブにめざめたきっかけは、プライマル・スクリームの91年作『Screamadelica』。その後タワーレコードへ入社し、12年ほどクラ ブ・ミュージックのバイイングを担当。少々偉くなった現在は、ある店舗で裏番長的に暗躍中。カレー好き。今月のひと言→実はこの時期、個人的な激動の最中だったので、正直楽しめるか……と思っていたのですが、行ったら12時間楽しみっぱなしでした。宇川先生(ドミューーンTシャツ買いました!)のVJがやはりスゴくて、ギタリストが20人ぐらい並んでプレイする映像ってどこから見つけたの……? と思った次第。

 

 

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