夜の現場で着実に支持を広げてきた大注目のR&Bシンガーが、待望のニュー・アルバムをリリース。追い風のなかで改めて世に問う〈言葉と音色〉とは?
R&Bオリエンテッドな音楽性をベースにしたアーティストというのもそろそろ特殊な存在ではなくなっていてほしいが、 質はそれぞれとしてリリース量に関してはまだまだ女性アクトの元気さが目立っているのが現状だ。それでも昨年あたりから〈SUGAR SHACK〉のよう なパーティーも軸にして、男性陣の意欲的な作品が徐々に増えてきているのは注目すべき動きじゃないだろうか。そして、そんな状況のなかで精力的に動いてい る男性R&Bシンガーが、昨年末にリリースしたミニ・アルバム『REPLAY』もロング・ヒット中のCIMBAだ。
リオデジャネイロで育った彼は、帰国後のティーン時代にT-SKと結成したVery Phat Soulとしてデビュー。2007年には『PRIMEIRA』でソロ・デビューを果たし、本人の体験に根差してブラジルのストリート・チルドレンを歌った “ファベーラ”や、それ以降何度も声を重ねることになる宏実との“香水”といった幅広い楽曲を披露している。一方ではKEN-RYWやSI-RUDEと いった当時のレーベルメイトをはじめ、妄走族の神、S567やDestinoといったラッパー陣とのコラボもコンスタントにこなし、先述の 『REPLAY』効果もあってその期待値をジワジワと高めてきていたのだ。
そんなこんなを経て完成したのが、およそ3年ぶりとなる2枚目のフル・アルバム『Words and Notes』である。配信ヒットを記録した“奇跡”は宏実との名コンビぶりを改めて痛感させるバラードで、それに続くシングル“MY LIFE”は SEEDAを迎えてメッセージを重視した真摯なナンバー。アルバム全体は盟友T-SKとT-4、そしてI-DeAをプロデューサーに起用し、線の細さを伸 びやかさに転化した艶のある歌唱が楽しめる。トランシーで凝った意匠のアップ“Neva eva”、ソングライターとしても売れっ子のNaNaと掛け合いで聴かせる情感豊かなスロウ“Call”など、作中の核はニーヨ以降の作法とポスト着うた (?)的な今日性をごくスムースに結びつけた佳曲群だ。ポジティヴな“Livin' with the sky”にはKEN-RYWとSI-RUDEを、DJ LAWのトークボックスが響くパーティー曲“FLY GIRL”にはGIPPERとMr.Low- Dをそれぞれ迎え、ラッパーとの相性の良さも再証明。白眉はドリームばりの歌い口も織り交ぜたセクシャルなスロウ“Sex Dreams”で、裏表のない品行方正なラヴソングが多い昨今にあっては例外的なロマンティシズムが滲む。R&Bはこうでないと。
▼関連盤を紹介。
左から、CIMBAの2007年作『Primeira』(DAY TRACK)、2009年のミニ・アルバム『REPLAY』、タワレコ限定の先行シングル“MY LIFE”(共にPhat Soul/EXIT LINE)、SEEDAのニュー・アルバム『BREATHE』(KSR)、宏実の2009年作『RAINBOW』(Sugabee)、S567の2009 年作『THE WORKS』(EXIT LINE)