フィンランド音楽祭レポート
──サマーフェスティヴァルで一柳慧らの作品特集
この夏、フィンランドの二つの音楽祭で日本人の作品が特集された。ひとつは、ヘルシンキに程近い古都ポルヴォーでのアヴァンティ・サマーサウンズ(6月30日~7月4日)。25回の節目となる今年、一柳慧がテーマ作曲家として招かれ、オルガン独奏からオーケストラ作品まで12曲が上演された。その演奏レベルは、作曲家本人も、「熱心な交流意欲に支えられた見事な演奏」と感嘆するほど。「初めてのフィンランドは予想を超える驚きと感動の連続。音楽的なレベルの高さは秀れた作曲家や指揮者、将来を展望した企画性の高い催物などに象徴されている通りであったが、私に新鮮にうつったのは豊かで自由な精神性に裏付けられた一般の人々の文化や芸術に対する関心の高さであった。その雰囲気が環境として滞在中ひしひしと伝わってきて感動的であった。」と振り返る。ほかに、野平一郎、夏田昌和が、ピアニスト、指揮者として自作の演奏に参加。間宮芳生、池辺晋一郎等の作品も上演された。音楽祭の芸術監督でチェリストのセッポ・キマネンは、先頃までフィンランド大使館の報道文化担当参事官として東京に在住。両国の音楽界をつなぐキーパーソンだ。
©Heikki Tuuli for Avanti!
もうひとつは、フィンランド中部、緑豊かなヴィータサーリでのタイム・オブ・ミュージック。Voiceとエレクトロアコースティックがテーマの今年は、合唱大国フィンランド初訪問となる東京混声合唱団が、間宮芳生らの合唱曲を披露。音楽祭の芸術監督ペルットゥ・ハーパネンは、昨年、各国の文化機関と提携してクリエーターの交流を行っているトーキョーワンダーサイト(TWS)のレジデンス・プログラムで来日しているが、今年は逆に日本から、作曲家の鷹羽弘晃が、同プログラムによりフィンランド派遣されプレゼンテーションを行った。和楽器とバロック楽器による〈アンサンブル室町〉の指揮者でもある同氏は、当地の制作環境の充実ぶりに驚きの声を寄せた。「ヴィータサーリの全公演でライブエレクトロニクスの演奏条件が整っており、スタッフのサポートも素晴らしい。フィンランドの若手作曲家の作品は溢れるイメージを120%曲の中に書き切っている爽快感が常にあった。ヨーロッパの中心に対して意識しながらも、各々が自由に自分のスタイルを追い求めるところなど、私たちが共感できる部分も多いのではないか」
両国の音楽交流は、確実に加速されている。