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LIL' J 『FUNXTA』

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SPOTLIGHT!
公開
2010/12/07   20:11
更新
2010/12/07   20:11
ソース
bounce 327号 (2010年11月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

内外の暴れん坊たちにグッド・ヴァイブを授けてきた北のグルーヴ・マスターがついにソロ作を投下したぜ!

 

オートチューンによる歌声の変調/加工が世界的にポピュラーな手法となって以降、例えばLUVRAW & BTBやSequickらの近作などを通じて、変声エフェクトの元祖たるトークボックスが注目される機会もまた増えてきたように思う。ただ、往年のファンクに強い影響を受けたウェッサイ~チカーノ・ラップ界では、時流とは関係なくトークボックスの美しさが愛されてきたことも忘れてはならない。その道の立役者として海外にフィンガズやドッグ・マスターがいるとすれば、日本のウェッサイ・シーンに独自のトークボックス・ヴァイブを注入してきたのがLIL' Jだ。今回登場した初の作品集『FUNXTA』は、彼の作り出すサウンドの心地良さを改めて証明するものだろう。

同じく北海道を拠点とするNORTH COAST BAD BOYZ(現N.C.B.B.)のプロデューサー/客演者として脚光を浴びたLIL' Jは、トークボックスのみならず、MPCにモーグやサックス演奏までも併用して自在にグルーヴを作り上げるサウンドメイカーだ。N.C.B.B.周辺やAK-69らの作品に参加する一方、カジュアルやフォーサムのプロデュース/リミックスを手掛けたり、その仕事はすでにUSの本場にも波及済み。今回の『FUNXTA』には、これまで彼が関わってきた楽曲のごく一部と、本作のための新録チューンが7つずつ収められている。既発ワークスではN.C.B.B.きってのメロウ・ジェム“Baby Girl”を筆頭にHOKTやYOUNG DAIS、1-KYUらの人気曲が並び、ソロで聴かせるまろやかなレゲエ“BOUNCE TIME LOVER”も出色だろう。

一方の新録曲ではHOKTとTWO-Jを迎えたスムースなクルージング・チューン“MUZIK ON”、ANTY the 紅乃壱の優しい語り口が染みる“KIMAMA...”といった安定感抜群の絡みに加え、お返しに駆けつけたカジュアルや、オヤG声でブルージーに歌うイーノイ・スクロギンスなど、US勢との手合わせもバッチリ。他にも季節対応に(?)トークボックス全開で“Last Christmas”をカヴァーしたり、シメには自身の率いるJAY'S BAND名義で腰の入ったバンド・サウンドを聴かせたり。温かいミュージシャンシップと熱いファンク魂が全編から伝わる内容は、まさに〈FUNXTA〉と呼ぶに相応しい。

 

▼関連盤を紹介。

左から、AK-69の2009年作『THE CARTEL FROM STREETS』(MS)、HOKTの2009年作『21 Century Rock Star』(HOOD SOUND/Village Again)、ANTY the 紅乃壱の2010年作『ANTY』(plusGROUND)

 

▼LIL' Jの参加作を一部紹介。

左から、NORTH COAST BAD BOYZの2007年作『THE STORIES』(DIG DA GOOD I.M.C.)、2008年のコンピ『DIRTY SQUAD #2 -Bad Boy Selection』(KSR)、カジュアルの2009年作『The Relapse』(Westside)、フォーサムの2010年作『Loyalty & Respect』(Perfection/ソニー)

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