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Kenmochi Hidefumi

連載
NEW OPUSコラム
公開
2010/12/14   10:02
更新
2010/12/14   10:03
ソース
bounce 327号 (2010年11月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

独創的なサウンドスケープを優美に紡ぎ出す気鋭の才能から届けられた新たな風景とは

 

別掲のNujabesトリビュート盤にて“modal soul”をオーガニックな感触にリワークしているのが、〈ポスト・クラブ・ミュージック〉を標榜するKenmochi Hidefumiだ。2枚のミニ・アルバムを発表した後にNujabesに見い出され、Hydeoutから発表した初めてのフル・アルバム『Fallicia』で大きな脚光を浴びた彼だからして、これは美しい恩返しのようなものだろう。そして、その美しさは待望のニュー・アルバム『Shakespeare』にもなみなみと注がれている。

ハウスやドラムンベースなどの軽やかな意匠をガット・ギターやピアノを主体にしたアコースティックな音色で具現化していく独創的なインストの快さは今回も圧倒的だ。パーカッシヴなリゾート感に溢れた冒頭の“Agharta”やハウシーな眩しさを纏った“Vermillion Sky”などはブラジル音楽やフュージョン好きにも直球の、不思議な異国情緒とギター・インストの快楽性で満たされている。また、間にbirdや中島美嘉といったシンガーとの仕事を経験したことも関係あるのか、今回はメロディーメイクにいっそう力点が置かれていて、優美なピアノ曲やサウダージなブレイクビーツも胸に染み込んでくるかのよう。なお、入手困難だった初期のミニ・アルバム2枚も復刻されているので、この機会に彼の世界に触れて、浸ってほしい。

 

▼新作と同時リイシューされたKenmochi Hidefumiのミニ・アルバム。

左から、2006年の『TIGER LILY』、2007年の『CATOBLEPAS』(共にUNPRIVATE ACOUSTICS)