暴風は蛇腹のガラス窓を
ゆらすだろうと
押さえつける鉄筋をはわせに
二人の兄弟と二人の友人とが
やってくる
だれしもがしっている
S島の台風を
わたしたち家族はしらない
くるまは大きな木のちかくに
置かないほうがいい
庭のいすもとばされるから
倒しておきな
木の枝はボキボキリと折れるよ
家は武装され
一人は窯のようすを見に
一人は馬の餌やりへ
兄弟たちも那覇まで帰っていった
翌日 雨風が無茶をした
ここに移ってから
働き尽くめだった
未来から漂ってくる甘いにおいや
突き上げてくる切なさを感ずることもなく
やっと言葉を遊ばせられたのは
外に出ることを阻む台風のおかげ
鉄筋とコンクリの貝がらにつつまれ
お互いの声が大きく丸みを帯びてきこえはじめる
そうしてわたしたちは避難できていることに
気づいたんだ
PROFILE/青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界中で制作を行うアーティスト。LITTLE CREATURESやKAMA AINA、TAKU & GOROで活動。ソロ最新作『まわし飲み』、またbounceとソトコトの連載に加筆修正してまとめた初の著書「手をたたきながら」(mile books)が先日発刊されたばかり。その他最新情報は、〈tone.jp/artists/aoyagitakuji/〉へ!