TIM BUCKLEY 『Happy Sad』 Elektra/ワーナー(1969)
60~70年代USのフォーク・ロック・シーンにおいて、猛烈な勢いとスピードで孤高の道を突き進んだティム・バックリー。このサード・アルバムは、甘く物憂げでメランコリックな歌声の魅力と、フリー・フォームなジャズへの深い傾倒を体現したアヴァンギャルドな冒険の両方が味わえる、静かなる衝撃作だ。彼の実子ジェフ・バックリーの音楽を愛する人たち、トム・ウェイツの初期作やニック・ドレイクの作品を愛する人たちには必ず聴いておいてほしい一枚。
TIM BUCKLEY 『Starsailor』 Straight/Warner Bros./ワーナー(1970)
フランク・ザッパの設立したレーベル=ストレートに移籍して発表された5枚目のアルバム(日本盤としては初登場!)。50年代西海岸ジャズの先鋭的なプレイヤーや、マイルスやコルトレーン、オーネット・コールマンらの表現ともシンクロする、束縛から解き放たれたフリー・インプロヴィゼーション感覚の歌声が圧巻! 同年リリースの『Lorca』と同じく、ヒッピー&フラワー・ムーヴメントの時代にキッパリ背を向けた気骨溢れる入魂作だ。
TIM BUCKLEY 『Greetings From L.A.』 Warner Bros./ワーナー(1972)
ジェフ・バックリーの才能が父親譲りのものであったことを、もっともわかりやすく実感できる作品がこれ! ローリング・ストーンズやドアーズといったロック・レヴォリューションの旗手たちと比べても何ら劣ることのないグルーヴとドライヴ感! そして、形式に囚われない自由奔放さで時代から突出(傑出)してさえいた創造的なヴォーカリゼーション……フリージャズ的な表現に留まることなく、またもやガラリと表現世界を一新させた一枚だ。
RANDY NEWMAN 『Randy Newman』 Reprise/ワーナー(1968)
ヴァン・ダイク・パークスやニルソンへの楽曲提供によって、すでに業界内ではソングライターとしてツウ受けする人気を集めていたランディ・ニューマンのファースト・アルバム。流麗なストリングスを配したノスタルジックなアレンジ、新人らしからぬ屈折した歌声……後年に彼が発表する優れた映画音楽作品にも通じる感覚をいきなり味わえ、そのデビュー作らしからぬ老成ぶりはいろんな意味で桁違いだ。当時まったく売れなかった作品ながら、これはいまこそ再評価すべき!
RANDY NEWMAN 『12 Songs』 Reprise/ワーナー(1970)
前作から一転してカントリー・ロック調のバンド・サウンドを導入した2作目。バーズのクラレンス・ホワイト、ジーン・パーソンズ、そしてライ・クーダーらをゲストに招いてロック・フォーマットを採用しつつも、そこはかとなく漂うノスタルジックな音楽の薫り(ガーシュインなどに通じるあの感覚)は、まさにランディ・ニューマンならではのテイストだろう。シンプリシティーを極めた簡潔なソングライティングの魅力を堪能できる傑作だ。
RANDY NEWMAN 『Good Old Boys』 Reprise/ワーナー(1974)
ランディ・ニューマンらしいシニカルな皮肉やユーモアのセンスと、南部音楽への深い愛着と憧憬が込められた5枚目のアルバム。ジム・ケルトナー、ラス・タイトルマン、ミルト・ホランド、ロン・エリオット、ライ・クーダーといった気心の知れたメンバーのプレイに加えて、アンディ・ニューマーク、ウィリー・ウィークス、イーグルスの面々など、フレッシュな顔ぶれによるサウンド&コーラスの充実ぶりも目覚ましい傑作!