ゴスペル、ドゥワップ、ソウル、ファンク、ブラコン、R&B――変わりゆく変わらないものを守りながら柔軟に変容し、一時代どころかいくつもの時代を築いてきたアイズレー・ブラザーズ。今回は〈3+3〉時代の名作群と〈Mr. I〉のソロ作を立体的に紹介しましょう!!
オハイオはシンシナティで育ったアイズレー4兄弟——オーケリー、ルドルフ、ロナルド、ヴァーノンによって54年に結成されたアイズレー・ブラザーズ。半世紀以上を歩むなかで陣容や音楽性は常に変化してきたものの、ただひとつ揺るぎないのは、13歳でグループに参加し、まもなく70歳を迎えるロナルドの恐るべき現役感だろう。モーリス・ホワイトやオーティス・レディングと同じ41年生まれの彼だが、レコード・デビューは同級生に大きく先駆けた57年。しかも単なる年功序列的な重鎮じゃなく、常に新しい世代のリスナーを魅了し続けていることが驚異的なのだ。
ミルズ・ブラザーズを手本とした兄弟は、55年に四男ヴァーノンを事故で失いながらもゴスペル・サーキットを中心に地道な活動を続け、59年に初のヒット“Shout”をRCAから輩出。まだ〈ソウル〉という呼称もなくロックンロールがフレッシュな黒人音楽だった時代、ジャッキー・ウィルソンを真似た同曲もコーラス主体の典型的なロックンロール・ナンバーだった。61年にはトップ・ノーツのカヴァー“Twist And Shout”をチャート2位まで押し上げ、64年には自主レーベルのT・ネックを設立。バック・バンドにいたジミ・ヘンドリックスをレコーディングに抜擢したのもこの頃だ。
そのT・ネックはすぐに頓挫するものの、“This Old Heart Of Mine (Is Weak For You)”(66年)の大ヒットも生まれたモータウン時代を経て69年に再興。そして、その頃には弟のアーニー(ギター)とマーヴィン(ベース)、そして義兄弟にあたるクリス・ジャスパー(キーボード)という年少トリオが兄たちのバックを務めるまでに成長していたのだ……てなわけで、今回は全作品が紙ジャケでリイシューされた第2期T・ネック時代のグループと現在のロンという両面からアイズレーズの魅力に迫ってみよう。
▼アイズレー・ブラザーズの作品を一部紹介。
左から、59年作『Shout!』(RCA)、モータウン時代の編集盤『The Motown Anthology』(Motown)